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「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話) ブログトップ
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東京猫物語 第八十三話-② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー②

私は学生時代に建売広告のチラシを配布するアルバイトを経験しました。チラシが一杯詰め込まれた大きな重いバッグを両肩に下げて町中を何キロも歩き回り、一日掛かりで一軒一軒配布する重労働でした。それに比べて今回の配布はせいぜい一人あたり二百枚程度。途中、聞き込みも兼ねて配布したものの、二時間程で作業は完了しました。四人で協力したおかげです。

作業の終了とほぼ同時に看護助士おばさんが私たちの前に現れました。
「里親女が当てにならないから、お姉さんに会いに隣町へ行って来たの。新聞広告のやり直し掲載とチラシの新聞折込みを頼んで来たの。未だ実行して貰えないから」
看護助士おばさんは私たちに言いました。
「経費は全て里親女に負担させます。毎日ミイちゃんを捜して貰うから」
看護助士おばさんは強気でした。
「打合せもいいけど、チラシの配布が先じゃないの。今、真っ先に仔猫を捜すべきよ」
看護助士おばさんの娘さんが口をへの字に結びました。
(続く)

ミイちゃんの行方は? 次回、吉報が?

以上
管理人
2016.07.17

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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当ブログに掲載されている内容の無許可転載・転用を禁止いたします。

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東京猫物語 第八十三話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー①

看護助士おばさんが愛護団体の会長さんと喧嘩別れをした日から丁度一週間が経ちました。
看護助士おばさんに請われて、私と麻雀屋の年配の女性従業員さんは迷子猫の情報を求めるチラシ配布に協力することになりました。

私たちが里親女のハイツの前に到着すると、看護助士おばさんの娘さん夫婦に迎えられました。看護助士おばさんと里親女の姿は見えません。
用意されたチラシには、ミイちゃんのカラー写真と特徴、捜索情報を求める文面が刷り込まれてあります。看護助士おばさんたちの到着を待たずに、私たち四人は手分けをして里親女の住居から半径一キロメートル内の一軒一軒のポストにチラシを投函して回りました。ミイちゃんが逃げ出してから、もう二週間も経っています。果たしてどれだけの効果が期待できるでしょうか?
(続く)

以上
管理人
2016.07.10

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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東京猫物語 第八十二話ー⑥ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー⑥


麻雀屋さんたちも首を振って苦笑するばかりでした。
バアサン妹は猫婆ではなく、老獪な狸婆でした。
都合の良い耳、便利な記憶。なかなかたいしたものです。無駄に歳を重ねてはいません。仕事上や生活のある局面において、私たち若輩者は老獪な狸バアサンの対応を見習わなければならない場合が多々あります。
猫も自分に都合の悪いことは聞えないのだか、分からないかのように振舞います。猫は飼主から声を掛けられても、相手をする気がないと知らん振りです。何かを求められても、猫は自分の意に染まないと受け付けません。こちらの言う事が分からないのかと思いきや、大概分かっています。
一面、猫は自分に都合のいいこと、得になることはすぐに覚え、理解します。実に良く理解し、記憶力も抜群です。猫は一流の外交家です。自分の主張は通そうとしても、決してその代償に人の傘下には入りません。
禍根を残すことなく、自分の主張をいつの間にか上手に通してしまいます。猫は独立した精神の持主です。人の世話になっても、人に従属しているとは思っていません。家の者に対して平気で猫パンチを見舞っておきながら、一分と経たぬ内に自分が行った不埒な行為など一切無かったかのように人に甘えて擦り寄る猫もいます。
このような猫の習性を私は否定的に受け止めるつもりはありません。寧ろ、趣のある、素晴しい習性として受け入れています。
猫をかわいがっている人たちは、そんな猫との遣り取りを楽しんで一緒に暮らしているのでしょう。猫はそれで通ります。
しかしながら、バアサン妹の老獪な狸ぶりを好意的に受け入れる人はいません。
私たちは一同、その場で笑いました。ただ一緒に笑うことによって、お互いが心中に抱く思いを十分に語り尽しました。
(続く)

次回、第八十三話は里親会の顛末 その弐、「いなくなったミイちゃんがみつかった」との連絡を受けたが。。。。。

以上
管理人
2016.07.03



「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。


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東京猫物語 第八十二話ー⑤ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー⑤

「不妊手術には同意してくれたのよ。でも、お金の話を持ち掛けたら、急に耳がよく聞えなくなっちゃったのよ」
看護助士おばさんが私の問いに答えました。
「え?バアサン妹は耳が悪かったの?」
私は驚いて尋ねました。

看護助士おばさんは大きく首を振った後、溜息をつきました。
「こんなことはなかったはずなのにね。なんだか呆けたみたいになっちゃって。私たちが話し掛けても分からないみたいで、ただ頷くばかりなのよ。しょんぼりとした風で目は虚ろだし。しまいには、そそくさと帰り支度をしてお店を出て行こうとするので、それ以上何も言えなくなっちゃったのよ」
看護助士おばさんはその時の様子を丁寧に説明してくれました。
「ええっ?バアサン妹は、常日頃、自分の財布の中身を一円単位迄覚えている程頭はしっかりしているのでしょう?記憶力も大変良いと、こないだ聞いていますよ」
私は順々に皆の顔に目を向けました。
麻雀屋さんたちも首を振って苦笑するばかりでした。
(続く)

以上
管理人
2016.06.26

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十二話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー④

看護助士おばさんが不妊手術の済んだ母猫を猫町公園に戻した日、私たちは麻雀屋さんの事務所でお茶を頂いていました。看護助士おばさんの顔には、一つ厄介事を片付けたという満足感が窺われます。

「バアサンたち、快く不妊手術に協力してくれたのでしょう?」
私は看護助士おばさんに尋ねました。
看護助士おばさんは麻雀屋さんたちと顔を見合せた後、小声で笑いました。
意外な反応です。
「え、また反対したの?バアサンたち」
怪訝に思った私は、皆の顔を順々に一瞥して答えを待ちました。
(続く)

以上
管理人
2016.06.19

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東京猫物語 第八十二話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー③

看護助士おばさんの呼び掛けに応じた有志が公園猫たちの不妊・去勢に取り組んだ時、バアサン妹は「仔猫が見たい」と言って、お気に入りの猫に仔猫を産ませてしまいました。バアサン妹は母猫と二匹の仔猫を自宅に引き取らず、公園に放置してしまいました。
これは私たちのミスでした。
「もう絶対殖やさせない」
看護助士おばさんはまた募金を集め、私たちは二匹の仔猫が乳離れした頃合に飼主を探し、母猫に不妊手術を受けさせました。

「一匹で済んだのに。二匹増えて三匹になってしまったわ」
看護助士おばさんが不満をこぼしました。
「未だ少なく済んだ方よ。多い時には七匹も産むのだから」
麻雀屋さんたちが看護助士おばさんを慰めました。

お年寄であることを考慮し、今迄私たちはバアサン姉妹に不妊手術の協力金をお願いすることはありませんでした。しかし、「今回は費用を分担して貰いましょう」と、看護助士おばさんが強くこだわりました。
バアサン姉妹が安易に考えていると、皆の取り組みが徒労に終ってしまうからです。看護助士おばさんは、バアサン妹と麻雀屋さんの事務所で会う約束を取り付けました。何事も円滑に進むであろうと、この時、私は疑いませんでした。
(続く)

以上
管理人
2016.06.12

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東京猫物語 第八十二話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー②

麻雀屋の従業員さんたちと看護助士おばさんはこの姉妹と猫町公園で知り合いになって以来、お互いにお茶を御馳走するなど、そこそこ親しくお付き合いを続けています。老姉妹の住居には猫が六匹います。普段、老姉妹は猫を屋外へ出しません。バアサン妹は、猫町公園の猫たちに朝夕御飯を与えます。

バアサン姉は、マンション一階の駐車場に来る雄猫ハナちゃんをかわいがっています。昔、ハナちゃんがお腹に怪我をした時、近所の誰かが動物病院へ連れて行きました。そして、傷の治療ついでにハナちゃんは去勢されました。バアサン姉は関与していません。バアサン姉は他人との交流を求める性格ではなく、猫たちに関する諸々の相談事は全てバアサン妹が窓口となります。バアサン妹は財産を築いただけあって、金勘定に長けています。看護助士おばさんが猫の缶詰等をまとめて購入し、バアサン妹と分け合う機会が何度となくあります。代金を清算する時、決まってバアサン妹はレシートと商品、お釣りを細部迄照らし合せ、僅かな違いも無いことを確認します。看護助士おばさんによると、バアサン妹は財布の中身、それも小銭入れの中身を一円単位迄正確に把握しているそうです。バアサン妹は記憶力も良く、公園猫たちに与えたおかずを三、四日前の分迄正確に覚えています。
「一昨日の夕方にはなまり節、その前の朝は焼いたサンマの残り」という調子です。
「本当にしっかりしているよ」
お金に細かいという点で多少皮肉を込めてではありますが、麻雀屋さんたちは頻りに感心していました。物でもお金でも何かに強く執着することは、明晰な頭脳と健康な体を維持したまま長生きする秘訣なのでしょう。バアサン妹はそれを実践している生き見本のような方です。
(続く)

以上
管理人
2016.6.5

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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第八十二話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー①

猫町公園から細い道路を隔てた北側に、七階建ての美しいマンションが公園を見下ろすように建っています。マンションの外壁全面には、ほんの少し桃色がかった暖かみのあるシルバーグレーのタイルが貼られてあります。
公園に臨む各戸の南側窓には、ブラウン色調のスモッグガラスがはめ込まれてあります。少しだけ外へ突き出ているバルコニーも、建物の外壁に溶け込んでいます。竣工から二十年を経た今も、外観からは老朽化の兆しは全く見て取れません。マンションから最寄りの地下鉄の駅迄、早足で僅か五分です。国道と大通りからは距離があり、マンションの住人たちは便利な都心に暮らしながら、静かな環境の中で公園の景色の移り変りに四季を感じ取ることができます。

このマンションの五階に老姉妹が暮らしています。
姉は八十歳、妹は七十七歳です。二人とも足腰は丈夫と見えて、自転車で上るには少しきつく感じられる坂道でも毎日平気で歩いています。
姉は少し腰が曲がり、顔と体型はふっくらしています。いつも柔和な表情、性格はおっとりしていて人が好さそうです。
対照的に妹は背筋がぴんと伸び、痩せて頬がこけています。普段から眼光鋭く、険しい表情を崩しません。証券会社で抜群の営業成績を挙げて一財産築いたという半生が、近所で「やり手ババア」などと噂される所以です。怒ったような顔は、昔の百戦錬磨の名残かなとも思わせます。
(続く)

以上
管理人
2016.5.22

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十一話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十一話 「ふん!レベルが低い」ー④

猫町裏通りの皆さんがモモちゃんを頻りに褒めていたので、税理士事務所の奥様は亡くなった飼猫との思い出を懐かしみ、誰かに聞いて欲しくなったのでしょう。
「御苦労様でした。それでは」
税理士事務所の奥様は外門を閉めて、奥の玄関の中へ引っ込みました。

奥様の姿が完全に見えなくなると、何時からいたのか、私の背後で黙って立ち聴きしていたα社のお姉さんが口を開きました。
「ふん、レベルが低い。飼猫がトイレの粗相をしないくらい当り前じゃないの。家の中で粗相しなかったからと言って、どうせその辺の花壇とかをトイレ代りに使って御近所に迷惑を掛けていたのに違いないのだから」
猫差別の件以来、私はα社のお姉さんの言動には少しも驚かなくなりました。日頃他人には見せない裏の顔と、上品な淑女然たる表の顔とに今更大きな溝を感じることはありません。

モモちゃんが引き取られてから半月程経って、某公益法人の女性がモモちゃんの写真を持って猫町裏通りに顔を出しました。
「写真、彼女から貰って来たの」
写真の中のモモちゃんは、心もち大きくなったように見えます。飼主の女性の膝に抱かれ、大きく見開いた目でじっとこちらを見つめています。
(続く)

次の第八十二話 は、猫町で猫にかかわるばあ様姉妹のおはなしです。
以上
管理人
2016.5.8

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東京猫物語 第八十一話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十一話 「ふん!レベルが低い」ー③

モモちゃんの新しい飼主の女性は、最後に私たちに会釈するとキャリーバッグの窓をタオルで覆いました。そして、猫町駅へ向かって歩き出しました。
飼主の女性が突当りの角を曲がって見えなくなると、見送りに出ていた皆さんは各々自分たちの職場へ戻って行きました。

税理士事務所の奥様が最後迄名残惜しそうに佇んでいたので、私は引き揚げる前にお礼を述べました。税理士事務所の奥様は、モモちゃんを保護収容する際に手を貸してくれたし、カンパにも応じてくれました。
白髪の奥様は私に軽く会釈をして言いました。
「モモちゃんは利口な猫でした。新しい飼主さんの家でもきっとかわいがって貰えますね」
それから、奥様は過去に立ち返り、感慨深げに自宅で飼っていた猫について話し始めました。
「うちで飼っていた猫もモモちゃんに劣らず、とても賢い猫でしたのよ。本当に。私と主人が言う事は何でも理解しましたし、トイレの粗相は一度も無かったのですから」
「大切にかわいがられて、その子はさぞかし幸せだったのでしょうね」
私が奥様の意を汲むと、奥様はとても嬉しそうな顔をして大きく頷きました。
(続く)

熊本大地震による「震災関連の健康被害」が出ているようです。
車で寝泊まりされている方の「エコノミークラス症候群」、足にできた血栓が肺に飛び肺血栓を
起こすそうです。こまめに水分をとり、できるだけ体を動かすことが予防になるそうです。
足のマッサージもいいそうです。揺れが収まるようにお祈りいたします。

以上
管理人
2016.4.24

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十一話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十一話 「ふん!レベルが低い」ー②

飼主候補の女性が猫を飼うのに十分な資質を備えた人であることを、私たちは事前に某公益法人の女性から聴き取っています。猫の為に必要な如何なる出費も躊躇せず、深い情愛を以て世話ができる方です。前の猫は屋外へ出しませんでした。大切に飼っていたのでしょう。飼猫の平均寿命をはるかに超えて長生きしました。

「モモちゃんをうちの子にしても宜しいでしょうか?」
モモちゃんに面会した時、飼主候補の女性はその場で決断しました。そして、翌日の午後、モモちゃんは新しい家に迎えられることになりました。
「モモちゃんをかわいがってくれる方なら幸いです」
縁組が決まった後、猫町裏通りの皆さんも一様に賛成してくれました。
お別れの時、猫町裏通りの皆さんがモモちゃんを見送る為に路上に出て来ました。モモちゃんはキャリーバッグの中。新しい飼主の女性に抱えられています。魚屋さん夫婦、運送屋の皆さん、喫茶店の従業員さんたち、税理士事務所の奥様、塗装屋さん。皆さんはモモちゃんとの別れを惜しみつつ、これから幸せに暮らせるように願って見送りました。

「まあ、良い人ですから御理解下さい」
私は運送屋の社長さんと目が合ったので、言葉を掛けました。
「いやぁ、これで良かったよ。また、何かあったら、その節は宜しく」
運送屋の社長さんは笑顔で応えてくれました。

「なんだかんだ言っても、モモちゃんが一番懐いていたのは俺だよな」
傍で聞いていた塗装屋さんが、私たちの会話に割って入りました。

「ちょっと違うなぁ。一番早くからかわいがっていたのは、この俺なんだから」
透かさず、運送屋の社長さんが反論しました。
猫町裏通りの人たちは、皆優しい心の持主でした。僅かばかり関った仔猫の里親探しに協力し、飼主が決まるとモモちゃんの幸せを心から願いました。
(続く)

以上
管理人
2016.4.17

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十一話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十一話:「ふん、レベルが低い」ー①

猫町裏通りのモモちゃんに、思ったより早く新しい飼主さんが見つかりました。
里親会での飼主探しは徒労に終りましたが、モモちゃんに関った猫町の仲間は皆大喜びです。
某公益法人に勤める女性がモモちゃんを知人に紹介した結果、「モモちゃんに会ってみたい」という話になりました。モモちゃんの飼主候補は、隣町の役所に勤務している五十代前半の女性です。郊外の持ち家で姉と二人暮らし。姉妹揃って猫好きです。三年前、その方は愛猫を老衰で亡くしました。そして、亡くなった愛猫のことを思い出すと辛くなるので、今迄ずっと猫のことを考えることができませんでした。某公益法人の女性から「飼ってみてはどうか?」とモモちゃんを勧められた日を境に、「また猫と一緒の生活もいいかな」という心境に変わりつつありました。その女性が悲しみを乗り越え、愛猫との幸せな日々を懐かしく思えるようになる迄に長い月日を要しました。
(続く)
ももちゃん
(飼猫になったモモちゃん:飼い主さん宅にて)
「あれ 大きくなったね!」
以上
管理人
2016.4.12

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東京猫物語 第八十話ー⑭ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑭

「この一件が持ち上がる以前、おばさんはあの会長さんにはだいぶお世話になっていたらしいのよ。近所の外猫の不妊手術とか、里親探しも相当数お世話になっていたみたいなの」
看護助士おばさんの姿が見えなくなると、麻雀屋の年配の女性従業員さんが口を開きました。

「あれだけたくさんの仔猫を抱え、持ち込んで来る輩が後を絶たない状況にあって、彼らを一方的に非難できるかな。保護した猫の当面の養育費、治療費にしても、自己資金で捻出しているのでしょう?寄付に頼れる程、余裕があるとは思えなかったな。全部の猫に里親が見つかる訳ではないから、手元に残る猫は年々増える一方ですよ。あの会を紹介して貰う前に何件か他の愛護団体に電話で相談したけれど、けんもほろろな応対でしたよね。どこの会も「自分たちが保護している猫で手一杯だから、外部の人の参加は認めない」って。会長さんは、私たち飛び入りの部外者にも門戸を開いてくれましたよね。どの猫も幸せになる権利は平等だって」
私は率直な感想を述べました。

「もっとしっかりとした運営、管理が理想だし、もう少し慎重であれば今回の問題は起きなかったと思うの。誰も好んでこの様な事態を招いた訳ではないし、いなくなった仔猫さえ見つかれば問題は解決ね」
麻雀屋さんは期待を込めて言いました。

「そう。逃げた仔猫は雌だから、大人になって外で仔猫を産む前にね」
私はそう言うと、麻雀屋さんと挨拶を交して別れました。
(続く)

以上
管理人
2016.4.2

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東京猫物語 第八十話ー⑬ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑬

若い里親女は看護助士おばさんとの約束を履行しました。
休み明けの週の半ば、里親女の地元の新聞には迷子猫の捜索広告が掲載されました。

看護助士おばさんは新聞を持って猫町公園に現れました。ミイちゃん捜索のちらしも新聞販売店に手配済みとのことで、看護助士おばさんは里親女の対応に満足している様子です。
私は看護助士おばさんから新聞を受け取り、猫の捜索広告に目を落しました。
「迷い猫。名前:ミイちゃん、性:雌、生後約三ヶ月、見つけた方はXX迄お電話下さい」
何かおかしい。私はもう一度よく掲載広告を見直しました。
「あれ。色も模様の特徴も書いていないよ。これ、白黒写真だから、どんな色か模様か分からない。それにどの辺りで行方不明になったのかも書いてない」
私は広告内容の不備を指摘しました。
看護助士おばさんはひどくがっかりして、溜息混じりに言いました。
「本当。これではミイちゃんは見つからないわ。すぐにやり直して貰いましょう」
看護助士おばさんは里親女に「電話する」と言って、慌てて公園から立ち去りました。
(続く)

以上
管理人
2016.3.21

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十話ー⑫ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑫

看護助士おばさんの怒りは尚も収まらず、まくし立てました。
「売れ残った三十女とかが目を吊り上げてやってるんだから。「僕!か(飼?買?)わないならあっち行って」って、見に来た子供を怒鳴り散らすわ。ごみは散らかしたまま帰るわ。場所を借りているだけで、責任は全部元親ですって。だったら最初から会として活動する意味はないでしょう。所詮寄せ集めってことよね。誓約書ばかり交したって、里親がおかしな人だと分かった時点ですぐに返して貰わなければ何にもならないじゃないの」

来る時と同じような話になりました。
「ボランティアだなんて言っても、積極的に純血種の犬を集めて、三万円とか四万円で転売しているのよ。それも自分たちは手術代なんて掛かっていないのに。雑種は二千円から四千円の寄付で済むのに、所詮小金目当てなのよ。まともに人と付き合えない姨捨山の住人たちが、寄り集まって動物をだしに慰め合っているんだから」
看護助士おばさんはずいぶん件の愛護団体の裏事情に詳しい。
最初から問題だと分かっていたこともたくさんありました。何故、今迄里親会を当てにしたり、私たちに参加を勧めたりしたのでしょう。看護助士おばさんが愛護団体を貶してばかりいるので、私は次第に不愉快になりました。
麻雀屋さんは、相槌を打つのが親しい知人としての義務かと頻りに頷いていました。
「私もおかしいと思ったのよ。衛生面、飼育管理の面で、何度か首を傾げたくなりましたもの」

私はハンドルを握って二人の話を黙って聞いていました。
看護助士おばさんは自分であの若い女を里親として認めたのだから、里親会にばかり責任を被せることもないでしょうに。自分の非を認めてしまうと自我が崩壊してしまうから、全部愛護団体のせいにすれば楽なのでしょう。激怒が頂点に達した看護助士おばさんに対して、勿論、そんなことは告げられません。
「愛護指導センターなどと立派な看板を掲げているけれど、この県は猫の譲渡は行なっていませんよ。仔猫すらね。犬の年間譲渡数だって、あの愛護団体の三分の一にも満たないし。収容した犬の、飼主への変換率も著しく低いですね。たいして指導らしい指導も無いのだから、センターの広大な敷地、立派な施設、多額な人件費の一部は無駄。会長さんたちは限られた費用、時間、乏しい人材の中で精一杯やっているのでは?完璧を求めても限界があるでしょう」
私は最後に少しだけ愛護会団体を庇いました。
(続く)

以上
管理人
2016.3.5

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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東京猫物語 第八十話ー⑪ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑪

帰途車中、看護助士おばさんは拍車を掛けて怒りをぶちまけています。
「だいたいあの会はなっていないのよ。愛情も足りないし。真冬の寒い日でも猫を外に展示しているし、他の会がやっているようなビニールの風除けも、カイロも無しなのよ。拾った猫を蚤がいるまま譲渡したり、猫エイズや白血病の検査もしないまま譲渡したりしているのよ。複数飼いをしていたら、先住猫に移っちゃうじゃないの。見に来た人にその場で猫を譲渡するなんて、他の会ではやっていないのよ。しっかりした団体では、猫を譲渡する時に不妊手術の代金を預かり、約束通り手術が完了したら預かっているお金を返すのよ。里親が約束を反故にして繁殖したら、何の為にやっているか分からないじゃない。里親先で繁殖した仔猫が、何倍にもなって里親会に戻って来たことだってあるのよ。それこそ、倍返し、いや三倍返し、六倍返し。猫のばら撒きよ」
「まあまあ」
麻雀屋さんが看護助士おばさんを宥めますが、取り付く島がない状況です。
(続く)

以上
管理人
2016.2.21

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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東京猫物語 第八十話ー⑩ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑩

「それではこれで失礼します。お世話になりました」
私たちは会長さんに挨拶を済ませ、立ち去ろうとしました。
会長さんは私たちに対してばつが悪いのか、伏し目がちに「御苦労様」と一言だけ挨拶を返しました。私たちが車へ向かって歩き出すと、背後で会長さんの吐き捨てるような話し声が聞こえてきました。
「余計な事を言いやがって。黙っているように言ったのに。かわいがっている、で通せばよかったんだ。あ、おい。そいつはラブラドールの純血種だから、寄付金は四万円以上だぞ」
どうやら会長さんは、最初に里親女から仔猫が逃走した事実を聞いていた様子です。
「隠蔽していたのかしら?」
麻雀屋さんが私に尋ねました。
私は麻雀屋さんに問い返しました。
「おばさんに真実を伝える? 隠さない方がいいよね? それにしても、何?ラブラドールの純血種だから四万円って」
(続く)

以上
管理人
2016.2.9

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十話ー⑨ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑨

とんでもない女です。蚤がいるなら駆除してあげればいい。下痢するのは何かしら原因があるのでしょう。整腸機能が弱いとか、仔猫にはよくありがちです。どんなに元気な猫だって長い間一緒に暮らしていれば下痢もするし、もっと重い病気に罹ることだってある。この女には仔猫を医者に見せる程の優しさも備わっていないのでしょうか。確かに健康な状態で里親に渡すべきでしょう。
しかし、飼主のいない、保護した猫だと分かっているのに「取り替えてくれ」とは。

「物じゃないよ。全く」
私は喉から出掛かった言葉をぐっと飲み込み、会長さんの対応を見守りました。
会長さんは母親のクレームには反論せず、猫のケージが並んでいる場所に母娘を案内しました。
そこでしばらく仔猫を見比べた後、会長さんは母娘に提案しました。
「これでいいんじゃないですか。同じような模様で、同じ雄だから」
結局、母娘は前の仔猫を戻し、別の仔猫を貰って行きました。
「あんな女がきちんと世話できるのかしら」
麻雀屋さんがぼそっと呟きました。
(続く)

以上
管理人
2016.1.31

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十話ー⑧ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語 
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑧

何を言っても無駄と判断したのか、看護助士おばさんは会の人には挨拶もせず、私たちを置いて一人で先に車に戻ってしまいました。
「どうする?」
私は麻雀屋さんに今後の方針を確認しました。
「モモちゃんの飼主さんは猫町の皆さんで探しましょうよ。ねえ?」
麻雀屋さんの答えは私を満足させるものでした。
「それでは、モモちゃんをこのまま連れて帰りましょう」
私の言葉に麻雀屋さんは黙って二度三度頷きました。

荷物を降ろし終えた会長さんに、小学生の娘を連れた母親が私たちより先に声を掛けてしまいました。娘は仔猫の入っているケージを右手に下げています。
「前に貰ったこの仔猫ね、蚤がいたのよ。それに下痢もしていてあまり丈夫そうではないのよ。一番かわいい顔だし、模様がキジ虎だから気に入ったのだけど」
母親はいきなり本題に入りました。
「悪いけど、他の仔猫と取り替えてくれないかしら?」
(続く)

以上
管理人
2016.1.24

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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東京猫物語 第八十話―⑦ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑦

そうこうする内に、私たちは里親会場に到着しました。
会長さんもつい今し方到着したばかりの様子で、車の中の荷物を下ろしに掛かっていました。
看護助士おばさんは会長さんを掴まえ、事の成行きを早口で説明しました。そして最後に、仔猫の捜索を要請しました。
「会の方を動員して頂けないでしょうか?近隣一帯に捜索ポスターを貼り、チラシを投げ込み、仔猫の行方を聞き込みして頂けませんか?」

それを聞いた会長さんは、こめかみに青筋を立てて怒鳴り出しました。
「そんな事迄できるはずがないだろう。皆、忙しいんだ。あんたが里親に出したいと言うから出させてやったんだ。我々が会場を借りてはいても、里親に出すか出さないかは元親であるあんたの判断だ」
会長さんは言い放つと、看護助士おばさんとの話に幕を引いてその場を立ち去ってしまいました。
会長さんの傍らで黙って聞いていた女性会員の一人が発言しました。
「私たちはできる事を尽くしているわ。必ずしも上手く行かなかったからと言って、責められても困るわ。たくさん扱っているのだから、一匹くらいこんなことになっても仕方無いのよね」
(続く)

「ますますドロドロしてきましたね。でも、みんな実話なんです。ミイちゃんはいずこに?」
以上
管理人
2016.1.19



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東京猫物語 第八十話ー⑥ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑥

「これからどうすべきか考えましょう」
「いなくなった仔猫の為に、何ができるかが大切なのじゃないかしら」
私と麻雀屋さんが二人の間をとりなしました。
看護助士おばさんがこれ以上里親女を非難しても何の解決にもならないからです。
それから、どれ程立ち話を重ねたでしょうか。その結果、今後は双方で協力して仔猫の捜索に全力を尽くすという合意でこの場は収まりました。
近所一帯へ、仔猫の捜索ちらし二千枚の配布。
当地新聞に迷い猫の広告掲載。
毎日の仔猫の捜索継続。
里親女はこれらを実行すると約束し、私たちは引き揚げました。

私たち三人は、その足で里親会場へ向かいました。
車中、看護助士おばさんの怒りは収まりません。
「もう一週間にもなるのに。早く言ってくれたらすぐに捜したのに。ミイちゃんは無事かしら」
看護助士おばさんは一人で喋り続けました。
「私が全て悪かったのよ。あんな女を信じたから。でもね、里親会の看板掲げて良い飼主さんを見つける愛護団体だというから信頼して任せてしまったのよ。誓約書の取り付けにしても、会員が手続をしたのよ。専門家の集りだと思っていたのに。連絡先の住所だって私が後で会長さんに聞いたら、共同住宅なのに部屋の番号も書いて無かったのよ。管理会社を通じてやっと部屋を突き止めたのだから」
自分が全て悪かったと反省を口にするくせに、看護助士おばさんは愛護団体の責任をあれこれ並べ立てました。
「ああ、最初におかしいと思った時、すぐ部屋へ行けばよかったのよ。そうすれば未だ日も経っていなかったから、すぐに見つかったかもしれない」
(続く)

nice表示について、
付して頂いたいくつかの表示が消えてしまう事象が何度かありました。
ネット痴の私には原因がわかりません。ご迷惑やご不快な思いをおかけしないよう
判明まで表示を「しない」に設定いたします。ご了解ください。

以上
管理人
2016.1.11



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東京猫物語 第八十話ー⑤ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑤

「何で早く言わなかったの!」
看護助士おばさんが絶叫しました。
会長さんには「元気に暮らしている」と里親女は釈明していたものの、実の所、仔猫は既に部屋から逃げ出していた次第です。
「月曜日の夜、私が留守の間に近所の姉がクリーニング屋から引き取って来た洋服を届けてくれて、ドアを少し開けたままにしていたの。それで、仔猫がするするとドアの隙間から飛び出してしまったの。私が仔猫を飼い始めたことを姉は聞いていなかったので、気を付けなかったから。姉と近所を捜したけれど、一週間経った今も仔猫は見つからないの」

新しい家に連れて来られたばかりの仔猫は、決して外へ出すべきではありません。
仔猫が逃げ出してから、もう一週間が経過しています。
「どうして会長さんが電話した時、猫がいなくなったとすぐに言わなかったの?」
看護助士おばさんは同じ質問を繰り返しました。
里親女が口ごもって明確に答えないので、看護助士おばさんは興奮して里親女に掴みかからんばかりになりました。麻雀屋さんと私が二人の間に入り、看護助士おばさんを抑えました。
「早く言ってくれれば皆で探して、ミイちゃんは見つかったかもしれないじゃないの」
看護助士おばさんは口から沫を飛ばしています。
「ほらね。結局こういう風になると分かっていたから何も言わなかったのよ」
看護助士おばさんとは対照的に、里親女は冷静でした。
嵐の海の底の貝。里親女はできるだけ余計な事は喋らず、じっと嵐が過ぎ去るのを耐えているかのようです。
(続く)

nice表示について、
付して頂いたいくつかの表示が消えてしまう事象が何度かありました。
ネット痴の私には原因がわかりません。ご迷惑やご不快な思いをおかけしないよう
判明まで表示を「しない」に設定いたします。ご了解ください。

今年もわずか一日となりました。
生きていくことは大変です。歳をとるほどに実感します。
車谷長吉さんもよくそうおっしゃっていました。
そんな中でも、それぞれ誰もが幸せを見いだせるといいですね。
お訪ねくださった皆様どうもありがとうございます。
皆様のブログも楽しませていただきました。
どうぞよいお年をお迎えください。
以上

管理人
2015.12.31


「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー④

女性の声だから安心したのでしょう。
用件を聞かぬ内に部屋の主はドアを開けて屋外へ一歩踏み出しました。

二十歳になるかならないかの若い女です。看護助士おばさんは素早くドアノブを片手で掴みながら用件を切り出しました。若い里親女の横顔は「しまった」と言わんばかりの、ばつが悪い表情に変わりました。そして、私の顔を一瞥して「もう逃れられない」と観念したのか、看護助士おばさんとじっくり向き合いました。待機していた麻雀屋さんも合流し、私の後ろに立ちました。里親女が一瞬怪訝そうな表情を顔に浮かべると、すかさず看護助士おばさんは「里親会の会員たちです」と説明しました。実際には会員ではない私たちは、里親女に軽く会釈しました。会員が二人も同行して押し掛けて来たと知り、里親女は素直に真実を語り始めました。

「実は。仔猫は逃げてしまって。捜し出したらすぐに返すつもりだったのだけど。何処かへ行ったまま戻って来ないのよ」
里親女はたどたどしい小声で遠慮がちに言いました。
(続く)

以上
管理人
2015.12.27

!!!!

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー③

日曜日の朝七時前、私は麻雀屋の年配の女性従業員さんと同乗してXXハイツの駐車場に到着しました。「弟の車に乗って来た」と、看護助士おばさんは待合せの場所に一人で立っていました。
約束を取り付けず、朝駆けです。前以て訪問の予定を告げると、ミイちゃんを隠されてしまう心配があるからです。仔猫が部屋にいる時に里親女を訪ね、即座に返還して貰う作戦です。日曜日の早朝から外出してしまうことは、まずないでしょう。

私たち三人は、二階建てのハイツに一つしかない階段を静かに上がりました。
看護助士おばさんと私が里親女の部屋へ向かい、麻雀屋さんは想定外のトラブルに備えて階段を上がった通路の端で待機しました。
看護助士おばさんが部屋の入口正面に立ち、呼び鈴を押しました。
私はドアから三歩ほど横に退きました。
部屋の中からがさがさ音が聞え、間も無くドアの後ろから「はい」と女の返事がありました。
看護助士おばさんは名乗らず、「おはようございます」とだけ声を掛けました。
(続く)

以上
管理人
2015.12.20

次回、はたしてみいちゃんは無事返してもらえるのか?

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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第八十話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー②

「確か、誓約書には会が不適切と認めた場合、猫は返してして貰うと書いてあったわ。書類を盾にして、会長さんから強く仔猫の返還を求めて頂く方がいいわよ」
麻雀屋の年配の女性従業員さんが、いかにも気の毒そうな顔で看護助士おばさんに助言しました。

その晩、看護助士おばさんから私の携帯電話に連絡が入りました。
「会長さんからあの女にまた電話して貰ったのだけど、繋がらなくてね。かわいがっているそうだから、暫く様子を見ましょうと言われたのよ。でもあんな女に世話ができるはずないから、日曜日の朝、もう一度XXハイツへ行ってミイちゃんを引き取って来ようと思うの。あなたたち、里親会へ行くでしょう?会場から里親女のハイツは近いので、里親会に出る前に一緒に行って貰えないかしら?」
昼間と比べると、看護助士おばさんの声は落ち着いていました。
「いいですよ。日曜日の朝、早めに出ましょう」
私は即答しました。
(続く)

以上
管理人
2015.12.13

里親さんを探すときは、本当に慎重に。教訓です。

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話:里親会の顛末 壱ー①

モモちゃんは雀荘の事務所で元気に暮らしています。
雀荘の事務所では次回の里親会への参加について意見が交されていました。
そこへ看護助士おばさんが飛び込んで来ました。
看護助士おばさんは目にうっすら涙を浮かべて仔猫を託した里親を罵り始めました。

「ひどい女だったわ。信用していたのに。電話でミイちゃんの様子を尋ねたら、会場で話した時とはうって変わって冷たい態度なの。心配になって面会を求めたら、「もう私が貰った猫だから」と断わられたのよ。急いで会長さんから誓約書にある女の住所を聞いて、翌日の夕方、そこへ行ったのよ。ところが、留守で。それもXXハイツだって。誓約書の住所欄には番地だけで、共同住宅だなんて書いてなかったわ。XXハイツの管理会社に電話で確認すると、ペット禁止住宅だと判ったの。若い女性の一人暮らし。まして、ペット禁止の賃貸住宅ではミイちゃんは幸せには暮らせないわ」
看護助士おばさんは一気にまくし立てました。

「急いで返して貰いなさいよ」
「そうそう、その通りよ」
麻雀屋さんたちが口を揃えて言いました。

「私もそう思って里親女の携帯電話に何度も掛けたけれど、出ないのよ。会長さんに電話して貰うと、一度だけ繋がったみたい。「猫は元気でちゃんと世話しているそうだから問題は無い」ですって」
看護助士おばさんはがっくり肩を落して溜息をつきました。
(続く)

以上
管理人
2015.11.29

第八十話もすこし長くなります。

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第七十九話ー⑲ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第七十九話 里親会弐ー⑲

それから、すぐにまた私の携帯電話に連絡が入りました。
今度は「猫が欲しい」という話です。
「飼っている猫が尾に怪我をして、家に寄り付こうとしないのよ。娘が猫好きだから、代りに小さい仔猫にでもかい(飼い)替えようかと思って」
しゃがれた声の女性です。

全く呆れ果てた話です。命の尊厳も何もあったものではない。ろくでもない奴がコンタクトして来ます。
「かわいそうじゃないですか。怪我をしているなら早く捕まえて、病院へ連れて行ってあげればいいじゃないですか」
私は沸沸と煮えたぎる感情を抑え、電話の相手に告げました。
「あら、本当にそうねえ。何とか捕まえてみますわ」
そう言って女性は電話を切りました。電話の口調から、女性は少しとぼけた感じでした。
時間ばかりが経過し、結局モモちゃんの新しい飼主になる人は現れませんでした。
(続く)

:第七十九話は今回でおしまいです。次話は「里親会の顛末」

以上
管理人
2015.11.15

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第七十九話ー⑱ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第七十九話 里親会弐ー⑱
(洋品店の経営者の女性のお話が続いています)

「その方が「XX警察署のYさんという知人に会うついでに立ち寄った」と話していたことを思い出したので、たまたまXX警察署に勤務していた甥っ子にYさんという人のことを尋ねてみました。すると、どうでしょう?甥っ子は「Yさんなどという人はいない」という始末です。一体、どんな目的で猫を貰いに来たのでしょうか。その方が今度の火曜日にまたお店に来ても、私は絶対に猫を渡しません。適当な理由を付けて帰って頂きますわ。あなた様も気を付けた方が宜しいですわよ」

電話の趣旨は、親切にも不審者に対する注意を促すものでした。仔猫の里親を探すという点で、同じ立場にある紙上の仲間に対して、洋品店の女性は躊躇無く電話を掛けてくれた次第です。
早速、私はその話を会長さんに伝えました。
「里親詐欺には気を付けないとなあ。実際、身近な所にいるのだな」
会長さんの顔は深刻そうな面持ちに変わりました。
(続く)

以上
管理人
2015.11.8

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第七十九話ー⑰ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第七十九話 里親会弐ー⑰

時計の針が午後一時を指し、里親会は終了の時刻となりました。
その時、私の胸ポケットでAmaging Graceのオルゴール音が流れました。
「先日の新聞広告を見た」という女性からの連絡です。
看護助士おばさんの勧めに従い、私はモモちゃんの里親募集広告を当地の新聞に掲載していました。電話を掛けてきた女性は当地で洋品店を営み、私と同じ日の新聞に猫の里親募集広告を掲載していました。

「昨日、XX市からTさんと名乗る四十歳位の男の人が私の店に訪ねて来ました。その方が言うには「友人の分も含め、今お宅にいる猫を全部貰いたい。もし柴犬もいれば欲しい」と。その方、そわそわして落ち着きが無く、私としっかり目を合わせようとしないので、何かおかしいと思いました。とっさに「後で御自宅をお訪ね致します」と答えると、「急用ができたのでまた次の火曜日に来る」と言い残して帰ってしまいました。その晩、念の為に控えておいた電話番号に掛けると、「現在使用されておりません」という音声が繰り返し流れるばかりでした」
(続く)

ツー ツー ツー にゃんでしょう???
イヴリン 重い
(重い! 私の布団の上にのるイヴリン)
季節の変わり目、猫さんたちも寒さに弱いので温かく快適な暮らしを提供してあげたいですね。
以上
管理人
2015.10.25

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東京猫物語 第七十九話ー⑯ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第七十九話 里親会弐ー⑯(まだ続いています)

「本当だ。あれでは暑いはずだ。水が飲みたいのかもしれない」
麻雀屋さんの指摘を受け、私が会長さんにその旨を伝えました。
会長さんがきじ虎仔猫のケージの上にタオルケットを被せていると、例の競馬ファンの女性会員が、何でもないという風に打ち消しました。
「猫は暑さに強いから大丈夫よ。あは あはは」
やたら調子が高いというか、声高という感じです。

確かに猫は寒さに弱い動物です。しかし、だからと言って暑さに強いという展開にはなりません。
「猫の祖先はリビア山猫で、暑い砂漠地帯に暮らしている。故に、猫は暑さに強い」などと言う人がいました。リビア山猫が炎天下にほっつき歩くはずはなく、日中は岩穴などで陽射しを避け、夜になってから活動を始めるはずです。日本の夏は湿度が高く、室内飼いの猫は暑気中りしてしまうこともあるので注意が必要です。

愛護家と名乗るからには猫の扱いに長け、確かな知識と豊富な飼養経験に裏付けされていると思っていたのに、私の先入観は吹き飛びました。しかし、初めて訪れた彼らの里親会で私たちがとやかく意見する立場になく、きじ虎仔猫には日除けがされたので私も麻雀屋さんも口をつぐみました。
飛び入り参加者の若い姉妹が、私たちの遣り取りに注目していました。
「お仕舞い迄には未だ少し時間がありますが、仔猫を家で休ませませたいので一足お先に失礼致します」
若い姉妹は自分たちの茶虎仔猫を連れてそそくさと会場を後にしました。
(続く)

以上
管理人
2015.10.18

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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