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東京猫物語 第八十話ー⑭ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑭

「この一件が持ち上がる以前、おばさんはあの会長さんにはだいぶお世話になっていたらしいのよ。近所の外猫の不妊手術とか、里親探しも相当数お世話になっていたみたいなの」
看護助士おばさんの姿が見えなくなると、麻雀屋の年配の女性従業員さんが口を開きました。

「あれだけたくさんの仔猫を抱え、持ち込んで来る輩が後を絶たない状況にあって、彼らを一方的に非難できるかな。保護した猫の当面の養育費、治療費にしても、自己資金で捻出しているのでしょう?寄付に頼れる程、余裕があるとは思えなかったな。全部の猫に里親が見つかる訳ではないから、手元に残る猫は年々増える一方ですよ。あの会を紹介して貰う前に何件か他の愛護団体に電話で相談したけれど、けんもほろろな応対でしたよね。どこの会も「自分たちが保護している猫で手一杯だから、外部の人の参加は認めない」って。会長さんは、私たち飛び入りの部外者にも門戸を開いてくれましたよね。どの猫も幸せになる権利は平等だって」
私は率直な感想を述べました。

「もっとしっかりとした運営、管理が理想だし、もう少し慎重であれば今回の問題は起きなかったと思うの。誰も好んでこの様な事態を招いた訳ではないし、いなくなった仔猫さえ見つかれば問題は解決ね」
麻雀屋さんは期待を込めて言いました。

「そう。逃げた仔猫は雌だから、大人になって外で仔猫を産む前にね」
私はそう言うと、麻雀屋さんと挨拶を交して別れました。
(続く)

以上
管理人
2016.4.2

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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