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東京猫物語 第九十一話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第九十一話:散会ー③

α社のおねえさんは、公園猫たちの飼主として最低限の責任を果しました。
残っていた四匹の公園猫の内、二匹はα社のお姉さんが自宅へ引き取りました。他の二匹は、看護助士おばさんの伝手で病院の職員に預けられました。
α社のおねえさんは猫邸を片付け、ブルーシートを小金持のホームレスに譲りました。

三月の末、α社のおねえさんは隣の県に転勤しました。
猫たちがいなくなった後の猫町公園では、例年と変りなく桜が満開となりました。昼休みの猫町公園は、お弁当を広げて談笑しているOLたち、休息をとっている学生たちで賑わっています。
しかし、猫たちが桜の木の下で心地好さそうそうに昼寝をしたり、公園を訪れる人たちに食べ物をねだったりする光景はもう見られません。   
(完)

完結しました! 今回の猫のおはなし。
長らくありがとうございました。

以上
管理人
2017.05.21

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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当ブログに掲載されている内容の無許可転載・転用を禁止いたします。


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東京猫物語 第九十一話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第九十一話 散会 ー②

α社のおねえさんは途中から他者との協調を拒み、限られた人たちとだけで公園猫の世話を続けてきました。バアサン妹は、α社のおねえさんの数少ない協力者の一人でした。一人で背負うよりもできるだけ多くの人が分担する方が楽なはずでした。しかし、猫に対する思い入れが強くなればなる程、飼育方法を巡って他の愛猫家との間に摩擦が生じて孤立してしまいました。

「バアサン姉妹がマンションに溜め込んだ猫たちは、御遺族がどうするか決めるでしょう。以前、α社のおねえさんからバアサン姉妹の猫を預かってくれないかと打診されたけれど、お断りしましたのよ。冗談じゃありませんわ。猫が小さくてかわいい時ばかり飼って、歳を取ったら人任せなんてねえ。お墓に片足はまった年寄が、後先考えずに好んで仔猫を飼うべきじゃなかったのですよ。他にも、腎臓病の老猫を二十万円払うから引き取ってくれないかと、相談しに来た人がいましたけれど、やはりお断りしましたのよ。二十万円では足りないし、直に死んでしまうのを見るのはとても辛いですからね」

愛猫家の写真屋さんは、猶も話を続けました。
「猫町公園の黒ちゃんもニューちゃんも交通事故で亡くなったそうです。決して外は安全ではありませんのよ。あの子たちも早い内に里親を探せば、飼猫になって死なずに済んだのに、私が紹介した人にあれこれけちを付けて里親に出さなかったのですよ」
何匹もの猫たちを保護してきた写真屋さんが、バアサン姉妹たちを嫌う理由は理解できます。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし

以上
管理人
2017.05.14

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第九十一話ー①  [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第九十一話(最終話:散会ー① 

二月末、猫町のバアサン妹が突然倒れて入院しました。そして、何日も経たずに亡くなりました。葬儀の後、バアサン姉も体調を崩して入院しました。
三月に入ると、α社のおねえさんに転勤の内示が下りました。
「ほっほっほっ。これでもうおしまいね。猫町公園も静かになるわ。今の内に飼主が見つかりそうな猫は、誘拐してしまうといいわよ。首輪も付いていないのだから構わないわ。α社のおねえさんたちには黙っていればいいのよ」
写真屋の女性店主が勝ち誇ったように言いました。
譲渡会
猫町の写真屋さんは、店舗併用住居に二十匹以上の猫を抱えています。某動物愛護団体に所属し、四十歳を過ぎても結婚せず、父親から受け継いだ店をお母さんと一緒に守っています。写真屋さんは予てからα社のおねえさんとバアサン姉妹の行動に批判的でした。猫の食事を置いたままにしたり、来園者の見ている前で猫たちを集めて世話をしたり、里親探しにも消極的だったり、α社のおねえさんに苦言を呈することも何度となくありました。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし

以上
管理人
2017.04.30

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第九十話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第九十話 幸せになってよかったね ー②

「何か気に障ったのかな?」
私は彼女の様子が少し気に掛かりました。そこへ、その日の一組目のお客さんたちが来店し、私は挨拶もそこそこに雀荘を出ました。

後日、私は猫町公園で麻雀屋の年配の女性従業員さんに出会いました。そして、四方山話の後、思い掛け無い話を聞かされました。
「この前、うちの若い人がね、奥で泣いていたのよ。どうしたの?って、聞いたら「幸せになってよかったね」ですって。あなたが持って来たおにいちゃんの写真を見て、泣いていたのよ」

麻雀屋の若い女性従業員さんが、猫町公園でおにいちゃんと接したのは短い期間でした。公園猫だったおにいちゃんの為に、涙を流して喜んでくれるとは。私は深く感じ入りました。
「陰ながらこれ程迄におにいちゃんの幸せを願ってくれるとは。本当に、おにいちゃんを大切にしないとなあ」
偽りの無い私の心の内です。
「そうね。おにいちゃんを看取る迄、大切にしてあげてね」
麻雀屋の年配の女性従業員さんは、左の腕に下げたバッグの中からシラス入りのマグロ缶詰を一つ手に取り、私に差し出してくれました。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし

以上
管理人
2017.04.25

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第九十話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第九十話:幸せになってよかったね ー①

その日、私はおにいちゃんの写真を持って開店前の麻雀屋さんの事務所に顔を出しました。おにいちゃんが我が家の飼猫になった後も、元気に暮らしていることを皆さんに知って欲しかったからです。率直なところ、おにいちゃんのかわいらしさを自慢したい気持もありました。
お昼寝 弐
写真の中のおにいちゃんは、座椅子の上で全身伸びきって、心地好さそうに昼寝をしています。足先からお腹迄は真上を向き、胸の辺りから上体を横に捻り、顔は真横を向いています。両足は宙に浮かせて身体の幅より心持広く開き、膝、足先の関節はいかにも猫らしい形に曲がっています。
両腕は、肘が少し曲がった状態です。上になっている腕は、白いふさふさの毛のある胸の辺りで宙に浮いています。下になっている腕と頬は、座布団に埋もれています。安心しきった顔。口は少し開き、小さい白い前歯と赤い舌先が覗いています。
お昼寝 壱
「まー。こんなにくつろいでしまって。お昼寝?」
麻雀屋の従業員さんたちは、代る代るおにいちゃんの写真を手に取り、おにいちゃんが元気に暮らしていることを喜んでくれました。しかし、程無く、いつも陽気な若い女性従業員さんは黙って奥のキッチンへ引っ込んでしまいました。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし

以上
管理人
2017.04.16

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東京猫物語 第八十九話ー⑦ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十九話 猫の友ー⑦

DSCF0530 (2)
猫の良さを理解できると、猫との暮らしは家族の健康を増進する。
家族の日常のストレスを緩和し、免疫力を増進すると思われる。

猫は、人の顔色や態度からその心を読み取る。
私たちは猫に不安を与えないように気を配り、心穏やかに過ごすのが望ましい。

猫は勘がいい。
「今日は予防注射に連れて行くぞ」などと私が構えていると、何故か猫は察知して寄り付かない。キャリーバッグに入れるのも一苦労。元気な時、猫は家中を逃げ回る。やっと収容して動物病院へ、車中、アーウォン、ミィミィ、騒ぎ通し。診察台では借りてきた猫そのもの。診察が終ると自分からキャリーバッグの中へ。帰途車中、一声も発しない。

猫が幸せな一生を全うするには、人による適切な支えが不可欠である。
猫の飼主、専有保護者は、真の愛情を以て猫を貴び護る責任がある。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし

以上
管理人
2017.04.09

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十九話ー⑥ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十九話 猫の友-⑥

猫はとても執念深い一面がある。
「復讐するは我にあり」猫は仕返しをする。
明け方起こされるのが嫌で私が寝室を閉め切った時、猫は未開封のドライフードを納戸から持ち出し、袋を破って開かずのドアの前にぶちまけた。
「降参。もうしません。しかし、納戸にしまって置いたのに、よく分かったね」

猫は歯軋りもするし、鼾をかき、寝息もたてる。また、おならもする。
猫は情愛豊かで、家族の愛情を十分理解する。
猫は清潔である。猫の部屋が汚れたり、猫自身が汚れたりした場合、責任は全て飼主にある。

上様

猫は気高い。要求は多く巧妙だが、心の底から人の軍門に下ることはない。
猫の顔は心の鏡。満足、不満、怒り、さまざまな気持が目付き顔付きに表れる。
実に感情が豊かである。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし
桜は各地で開花しましたね。

以上
管理人
2017.04.02

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十九話ー⑤ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十九話:猫の友ー⑤

猫は臆病で警戒心が強い半面、人が大好きである。
猫は時として嫉妬深い。家族が電話で話していたり、来客に応対していたりすると、割って入り邪魔をする。新聞を読んでいる時も然り。家族が他所の猫の匂を付けて帰宅しようものなら、寄り付かない。走り回って抗議する、サイレンのように唸る。

猫は時としてふて腐れることがある。思い通りにならない時、食事が気に入らない時、等。
そんな時、猫は建具で爪を研いだり、部屋の中を走り回ったり、普段は乗らない食卓に乗ったり、顕著に不満を態度で示す。
粗末
猫は家族を自分の都合の好い方へ誘導し、自分が理想とする世界を作り上げようとする。つまり、家族を上手に支配する。

家族の物は猫の物、猫の物は猫だけの物。
布団、敷物、椅子等。心做しか、猫は新しい物、高価な物を好む。
猫は家族の吹く笛の音は嫌うが、CDの名曲は嫌いではない様子。
猫は頭と心の切換えが早い。無意識、本能によるが、本当に変り身が早い。
気に入らなくて私の膝の上で私の横面を張って逃げたくせに、一分も経たない内にごろごろ喉を鳴らして擦り寄って来る。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし
もうすぐ 桜、開花?
以上
管理人
2017.3.20

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十九話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語 
第八十九話:猫の友ー④

私はおにいちゃんと一つ屋根の下に暮らして、猫という生き物に関する見識を新たにしました。
(猫好きの皆さまは、当然の如くご理解済かと思いますが、初めて猫と暮らしたので)
おねむ 弐
猫は屋内だけの生活に十分適応できる。
猫は寂しがり屋である。
猫は家族の言葉を理解する。「お留守番」「待っていて」「(家族を)呼んで来て」「だめ」「ここに座って」等。
猫は家族と気持が通じ合える。
猫は家族に対して猫なりの思い遣りを示す。
家族が病気で伏せている時、無理に遊ぼうとは言わない。爪が当たって痛がると、時には猫は済まなさそうにしゅんとし、「私のせいではない」とばかりに席をはずす時もある。
おねむ
猫は家族に対して様々な要求をする。
「早く御飯にして」
「エアコンをつけて」
「こたつのスイッチを入れて」
「外を見たいから窓を開けて」
「早く起きて」
「まだ寝ないで」
「一階へ下りましょう」
「トイレに行くから付いて来て」
「遊ぼう」等。

猫は家族の行動を日頃からよく見ている。そして、電化製品の使用等、人が操作することとその結果を関連付けて理解する。
「涼しくなるのは家族がエアコンのスイッチを入れるから」という具合に。
猫は記憶力が良い。
猫は自分の意に染まない時、都合が悪い時、知らん振りが上手。
猫は自分の都合の好い事には高い学習能力を示す。

猫はとても耳が良い。
私が運転する自動車の音と他の車の音とを聞き分ける。来客を察知する。外の物音を誰よりも早く聞き取る。猫のお皿を洗う時の音、他の食器の音、猫は区別できる。家の中に侵入したゴキブリを誰よりも早く発見する。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし
以上
管理人
2017.3.12

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十九話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十九話 猫の友ー③

自分は平均より少し上の良い飼主であると、私は勝手に自負しています。
しかし、おにいちゃんにとって私は母に次ぐ二番手の存在です。母はおにいちゃんに対してさほど気配りをしないので、私はこの結果に不満です。
我が家の飼猫との生活は、どこにでも見られるありふれた暮らしかもしれません。しかし、日々飼猫との思い出が積み重ねられています。
寄り添って
「猫は好きではない」という人たちの中にも、猫と暮らしている内に猫好きに転じる人も多いようです。猫の魅力が人を変えるのでしょう。そして、家族皆から愛されてこそ、猫は幸せに暮らせるのです。
私も家族もおにいちゃんをかわいがり、おにいちゃんは遠慮なく自己主張しています。
遊びに夢中
おにいちゃんとの暮らしは、楽な事ばかりではありません。
初夏、毎日明け方の四時頃、私は起こされます。トイレや猫毛が散らばった部屋の掃除等、必然、猫を飼っていない家では生じない手間が掛かります。おにいちゃんが体調を崩すと、私はとても心配して心が痛みます。私が風邪で寝込んだりすると、おにいちゃんの遊びに付き合えなくなります。しかし、おにいちゃんとの生活から得られる喜びは、少々の手間や心配など問題にならない程素晴らしいものです。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし
以上
管理人
2017.3.5

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十九話―② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十九話:猫の友ー②

おにいちゃんは、毎日の食事に困ることはありません。
缶詰は毎日違う種類。メバチマグロ、甘エビ、タラバガニ等のお刺身。時々、贅沢もさせます。
サンマやイワシは食べません。好物のメバチマグロでも、養殖物、鮮度の落ちた物は口にしません。おにいちゃんは、毎日の睡眠が保証されています。おにいちゃんの昼寝の邪魔をする者はいません。おにいちゃんは家の中のどこででも自由に眠ることができます。私の布団も自由に使っています。室内暮らしでも、窓越しの日光浴は可能です。空調は完備。冬は暖かい部屋、ホットカーペットに炬燵。夏は冷房の入った部屋と、外の風が通る部屋を自由に行き来できます。
お行儀
おにいちゃんが若い時、私は仕事からどんなに遅く帰宅しても、毎日欠かさず遊びました。手を変え、品を変え、本当によく遊びました。同じおもちゃはすぐに飽きてしまうので、道具も方法も工夫が必要です。部屋にキャットタワーを備えると、高さを利用して遊びの幅が広がりました。
おにいちゃんが病気になった時、私は勤務先から有給を取ってできるだけ早く動物病院へ連れて行きました。食事、運動、休息。おにいちゃんの健康維持、病気・怪我予防にも私は日頃気を付けているつもりです。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし
以上
管理人
2017.2.25

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十九話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十九話:猫の友ー①

私はおにいちゃんとの暮らしを楽しんでいます。
おにいちゃんを飼猫として家に迎え、お互いに都合の良い時だけ接していた外猫時代とは違う関係を築いています。
おにいちゃんには、家の中の生活しかありません。
おにいちゃんの猫生は、飼主次第で良くも悪くもなります。
「おにいちゃんをうちに連れて来てよかった」
今、私は心からそう思えます。おにいちゃんはどうでしょうか?
公園暮らしを続けていたおにいちゃん。
私はおにいちゃんを屋外へは出さない、完全室内飼いにしました。
当初、おにいちゃんは外の世界を恋しがり、室内だけの生活にストレスを感じていました。二階のベランダで外の空気を吸わせたり、時間を見つけては一緒に遊んだりしました。おにいちゃんが家の中の生活に少しでも満足できるように、私はできる限り努めました。
月日を経て、おにいちゃんは家の中の暮らしに慣れました。
今、おにいちゃんはそれなりに幸せだと、私は信じています。
人の場合も然り、完全に満足のいく生活などはあり得ません。
「何でも思い通りになる猫生も無いのだよ」
私はおにいちゃんに弁解します。
(続く)

第八十八話は、飼猫との暮らし 弐:「猫と麦茶」ですが、この件は番外編(飼猫との思い出)にて、前に記載しましたので省略致しました。
寒さもあって、体のあちこちが痛むこの頃。皆さまもどうぞご自愛ください。

以上
管理人
2017.2.19

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東京猫物語 第八十七話 [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十七話:飼い猫との暮らし 壱 就寝中-②

タワー猫

(昔の話。思い出となりました)

こんな事もあった。
夢現の中、体が妙にだるい。いや、下半身が重いという感じだった。
はっきり目が醒めると、未だ夜中。
掛け布団からはみ出した私の片足に、猫がしがみついている。
私の膝から足首に掛けて、四足でがっちり組み付いている。
猫が振り向いた。
目が合うと、猫は大きなまん丸の目を更にひんむき、鼻から眉間に皺を寄せた。
恐ろしい顔だ。
それから猫は口をあんぐり開き、私の足の指に噛み付こうと歯を当てた。
白色の鋭い犬歯が見える。

恐ろしい牙だ。
無理に剥がそうとすれば、鋭い爪が私の脛に突き刺さるだろう。
そうかと言って、このままでは私の足の指がかじられてしまう。
「いっ いっ いたいっ いたいっ」
私は大声で叫んだ。
猫は怯まない。
「いたいっ いたいっ いたいっ」
私は更に声を張り上げた。
「いたいっ やめろっ」

猫は離れた。
しかし、尚も私の脛に未練を残して飛び掛って来ようとする。
私は枕を取って盾にした。
「どうしたの?」
私の大声で起してしまったのだろう。階段下から家族の声が聞える。
「何でも無い。猫が噛み付いてきただけ」
何でも無くはない。夜中に大騒ぎだ。
「そんなに大声を出して、御近所に迷惑でしょう」
家族に窘められ、私は呟いた。
「そんな余裕は無い」

猫はいつもの猫に戻った。
隣の部屋のキャットタワーに登って、コロンと仰向けになっている。
私の関心を引く時の格好だ。
私は部屋の灯りを点け、冷静になって足の指と脛を丹念に調べた。
傷は無い。爪の痕も無い。歯の痕も無い。
「痛い」と思ったが、実際にはそれ程痛くは無かったのだ。
恐ろしい、痛いと思う気持が幻覚を与えていた。
その後、何度となく同じ事が繰り返されている。
猫は遊んでいるだけだ。
それでも、私は恐怖と不安を払拭することができない。
今のところ、大声を出すしか猫の悪ふざけを止める術は無い。
(続く)

以上
管理人
2017.2.5

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東京猫物語 第八十七話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十七話:飼い猫との暮らし 壱 就寝中ー①

(昔、初夏の頃です)

夢現の中、薄ら寒さに目が醒めた。
未だ夜明け前。
普段、私は和室に布団を敷いて寝ている。
今、私は布団の外。何故か直畳に横になっている。
掛けていた厚手のタオルケットは敷き布団の上。
猫が布団のど真ん中でお腹を出して寝ている。
枕の横に、ちょこっと遠慮がちに寄り添っていたはずの猫。
仰向けに伸びて熟睡している。実に心地好さそうだ。
以後、同じような事が何度か繰り返された。
就寝中
ある夜半、私は目が冴えていた。
就寝前、珈琲を飲み過ぎたせいだ。
その夜も私は枕に腕を掛け、弓型に寝そべっている。寝返りをうって、
隣に寝ている猫を潰さないように。何て思い遣り深いのだろう。
しかし、飼主の親心は通じなかった。
やがて猫は、私の体に密着させていた四足を突っ張り始めた。
ぐいぐい押してくる。せいぜい六キロ弱の猫、結構力が強い。
「おい、寝惚けているのか?」
猫は目を閉じている。
圧力を避けている内に、自然と私の体は布団の外へ。
「なあるほど」
その夜、私は全てを理解した。
(続く)

以上
管理人
2017.1.29

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東京猫物語 第八十六話 [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十六話:猫の啼き声

「ニャオーン」
猫町公園の猫たちは、あまりこういう啼き方はしません。

「エ」「エン」「メ」「ミィ」
私の顔を見て猫が短く声を発する時、これらはちょっとした挨拶。また、こちらからの呼び掛けに対するお義理の返事。

「ニャーー」「ワーウオーーン」「ミイーー」「エエーーー」
長く、高い調子で猫が啼く時、たいてい、何かしら要求があります。おやつが欲しい等。要求が満たされる迄、少し大きめの声で繰り返し啼きます。かすれた声で啼く猫もいます。要求が満たされないと、猫はいっそう大きな声を張り上げて催促します。不満、抗議の場合も然り。私がオカリナを吹くと、こんな風に啼いて止めさせようとする場合もあります。

猫同志の遣り取りの場合、啼き声はまた異なります。

「ウンンーー」「ンアーーンー」「ウワアーーン」「ンオーン」
雄猫たちの睨み合い、威嚇の時、長く張りのある啼き声です。
人間の赤ちゃんが泣いているかのように聞える場合があります。
威嚇の声は低い調子から徐々に高い調子へ、そして大音声に変わります。
じっと蓄えられていたエネルギーが噴出するマグマの如く高揚し、ついには
「ギャッー」「ウエーー」という合図と同時に取っ組み合いの喧嘩に発展する場合もあります。
「ドッ」「ボッ」
二匹の猫が組み合いつつ、大地を転がる鈍い音を立てて庭の花をなぎ倒してしまいます。
明らかに劣勢の立場にある雄猫はあまり啼きません。啼いたとしても、消え入るような声です。片方の雄猫の威嚇する声ばかりが際立つ時、劣勢の雄はその場から立ち去り、平和裏に勝敗が決する場合もあります。

「ウアーン」「アーウォン」「ニャーグゥォン」
雌猫雄猫、恋の季節。
大きな声が近所によく響き渡ります。巻き舌で発音するのか、あたかもうがいをしながら発声するのか、声帯を震わすかのような啼き方です。

「ミィ、ミィ、ミィ」「ニャオ、ニャオ、ニャオ」
仔猫が母猫を呼び求める時、すがるように同じ調子で何度も啼き続けます。
疲れると一時短い休みを入れた後、再び必死に啼き続けます。

「ミャオ、ミャオ、ミャオ」「アオ、アオ、アオ」
母猫が仔猫を捜す時、傍に来いと呼ぶ時、短く区切り早く力強く啼きます。
仔猫が母猫を呼ぶ声より、めりはりの効いた調子です。
仔猫がなかなか出て来ないと、母猫の啼く声は段々哀しみを帯びて間延びして行くように思われます。

仲の良い猫たち、顔見知りの猫たちが一緒に過ごす時、啼いて声を掛け合う必要は殆ど無いようです。

人に向かって頻繁に啼く猫と、そうでもない猫がいます。
人に対する猫たちの親密さの度合によって、態度が異なるのでしょうか?遺伝因子が左右しているのでしょうか?後天的に形成された、性格の違いなのでしょうか?よく啼く母猫から生まれた仔猫たちが、皆一様によく啼くとは思えません。しかし、よく啼く仔猫と似た毛色のきょうだいは、やはりよく啼くようにも見えます。

うちのこ(猫)は、テレビのドキュメンタリー番組等に登場する「本物の」猫の声に対しては反応します。しかし、外国映画やアニメから流れる「人が吹き替えた」猫の声には一切反応しません。どれ程巧妙でも、人が真似した偽の猫の声は、猫にとっては人の声でしかありません。

以上

管理人
2017.1.10

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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東京猫物語 第八十五話 [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十五話:「猫の集会」:

ここで言う「猫の集会」とは、猫町公園における猫の集会のことです。
猫の集会は、主に夜開かれます。
真冬の厳寒日、雨の日、風の強い日の開催はありません。
猫の集会は通常、夕食後の午後七時過ぎから十時頃の間に開かれます。
当日猫の集会に参加する構成員は、予め決まっていません。
猫の集会に参加できる「人」もいます。
猫の集会に参加を許された人は、私を含めて限られた人だけです。
例え猫の集会場に居合せても、猫たちに仲間と認められ、猫の集会のエアー(air)を感じ取ることができない人は、猫の集会の「参加者」ではありません。
猫の集会 弐
猫の集会とは、人の視覚から得られる、猫がたくさん集まっている様態だけを言うものではありません。
そこには、うるさく啼き立てる猫はいません。
他の猫たちとの和を乱す猫もいません。
猫の集会の参加者は、同じ時間に同じ場所で、同じ風を感じて、同じ音を聞きます。
猫の集会に参加する猫たちは、皆顔見知りです。仲良し同士は最初に挨拶を交します。
猫たちの挨拶はおおよそ次の二通りです。
お互いの鼻と鼻を合わせる挨拶、相手のお尻の匂を嗅ぐ挨拶。
猫の集会の参加者と認められた人に、挨拶に来る猫もいます。
猫たちは、親しいその人の足の甲に頭を擦り付けたり、脛に体をすり寄せたりして挨拶を済ませます。人と猫が親密な関係にある場合、人が猫の目線に鼻を突き出すと、猫もそれに応じて鼻をくっつける場合があります。目を開けていると、猫も寄り目です。
猫の集会 壱
集会に参加している猫たちは、皆大概くつろいでいます。
スフィンクスのように腹這いに伏せている猫。上体を起して座っている猫。
ある猫は毛繕いをし、また別の猫はただじっと前を見つめています。
集会に参加している猫たちは、お互いに他の猫たちから適度な距離を保っています。大人の猫たちは、お互いに深く干渉しません。
静かな夜の猫町公園。
聞えてくるのはコオロギの鳴く声、遠くの国道を走る車のエンジン音、どこかで吼える犬の声。
微かな物音にも、猫たちの耳はぴくぴく、くるくる反応します。
耳のレーダーが捕えた情報は脳に伝えられ、猫たちは公園にいながらにして遠くの様子をおぼろげに理解します。聞き慣れない音を感知すると、猫たちは頭をもたげて神経を尖らします。突然、見知らぬ来園者があると、猫たちの注意は一斉にそちらへ向けられます。

猫たちは微かな羽虫の音さえも見逃しません。
暗闇の中に浮かび上がる街灯の明かり。光に誘われた蛾が宙を舞うと、それに目を止めた若い猫が透かさず後を追い掛けます。別の若い猫も、先の猫に従って蛾を追い掛けます。静寂の闇の中、街灯の明かりを縫って二匹の若いしなやかな肢体が交錯し、躍動します。
「何事か」と年配の猫たちは二匹を目で追うものの、冷ややかに遣り過ごします。猫たちと同じエアー(air)を感じ、日常を忘れて猫たちの世界に違和感なく溶け込んだ時、私は猫の集会の参加者であることを実感できます。

猫の集会は、参加者の自由意思で退席できます。
一匹減り、二匹減り、猫の集会は自然散開となります。
酔っ払い、塾帰りに寄り道する子供たち、三本足の猛猫、等々。思わぬ侵入者によって、猫の集会は突然散開となる場合もあります。

以上

管理人
2016.12.4

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十四話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十四話:麻雀屋さんと猫-③

猫町の外猫ハナちゃんは、バアサン姉妹から食事を与えられています。
時々、マミがいない時だけ、ハナちゃんは雀荘に顔を出します。マミが威嚇してハナちゃんを寄せ付けないからです。ハナちゃんは去勢された雄猫です。とても人懐こく、雀荘にお客さんがいても平気でお店の床に寝そべっています。

「俺なんか自宅でカメレオンを飼っているんだぜ」
ある日、お腹を出して床に寝ころんでいるハナちゃんを見て、常連の若い男性会社員が自慢げに言いました。
「嫌になっちゃうわね。どうして野生の生き物を家に閉じ込めるのかしら」
麻雀屋の年配の女性従業員さんが、若い男性会社員に向かって言いました。
「野生動物はねえ、生まれ育った土地で自然のままに暮らしていくことが一番幸せなのよ。遠い国から環境の違う日本へ連れて来られて、あなたのお部屋で暮らす方が幸せな理由なんて全く無いはずよ。珍しがって外国のカメレオンを買(飼)うなら、飼主のいない犬や猫を飼えばいいじゃないの。犬とか猫は、人の傍で手を掛けないと生きて行けない動物なのよ」
相手が若い常連客なので、遠慮無く説教が続きました。

その後も、マミとハナちゃんが雀荘で一緒に過ごすことはありません。
二匹は別々に麻雀屋さんたちからかわいがられています。
(続く)

以上
管理人
2016.11.13

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東京猫物語 第八十四話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十四話:麻雀屋さんと猫-②

マミたちが雀荘の中庭に迎えられてから一月が経ちました。
仔猫たちは生後二ヶ月程に育ち、マミは仔猫たちの面倒をあまり見なくなりました。麻雀屋さんたちは仔猫たちに触れるようになりました。

麻雀屋の年配の女性従業員さんが、二匹の仔猫たちを自宅へ連れて帰りました。
一匹は自宅で飼猫とし、もう一匹は知合いに譲りました。
ある日、麻雀屋さんたちはマミを上手く事務所に閉じ込め、バスタオルを使って三人掛かりでケージに押し込めました。マミの鋭い爪を避けて捕獲するには、決死の覚悟が要りました。
「もう子供は無しよ。雄のハナちゃんとは今迄仲が悪かったけれど、これから少しは変わるかと思うの」
麻雀屋の若い女性従業員さんが、そう言って微笑みました。
(続く)

以上
管理人
2016.11.06

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十四話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十四話:麻雀屋さんと猫-①

「そんな塩辛い物、上げないで。健康に悪いから!」
麻雀屋の年配の女性従業員さんが、猫におにぎりを与えている若い娘を叱責しました。見知らぬ娘が吸う煙草の煙が、猫に掛かったことも癪に障りました。
「あんたの猫じゃないでしょう?小うるさいこと言わないでよね」
若い娘は抗弁しました。親しい知人同士なら、公園猫の飼い方についてよく話し合うことは可能です。しかし、どうしても自分の主張を通したい人は、猫を自宅に引き取って飼猫にするほかありません。

麻雀屋さんたちは三人で相談した結果、猫町公園の茶トラ猫を雀荘の中庭で飼うことにしました。茶トラ猫はマミと名付けられました。
マミには生後一ヶ月位の仔猫が二匹います。麻雀屋さんたちは、猫のトイレを二つ、飲水のボールとステンレスの小皿を三つずつ買い揃えました。中庭にある物置の中を綺麗に片付け、空いたスチール棚の上に猫のベッドを整えました。

マミは雀荘の中庭と外を自由に行き来します。
営業時間中、麻雀屋さんたちはマミたちを事務所の中にも招き入れます。マミが仔猫たちを置いたまま外出することも稀ではありません。そして、普段は安心して仔猫たちと一緒に御飯を食べたり、物置棚のベッドに寝そべったりしています。仔猫たちが中庭で御飯を食べている時、見慣れない客が来店すると、マミは中庭から店の方を向いて注意を傾けます。また、誰であっても自分に触れようとすると、マミは素早く身をかわして逃げてしまいます。麻雀屋さんたちはマミに不妊手術を施したいと考えていました。
(続く)

以上
管理人
2016.10.30

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑬ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑬

里親姉妹と別れた後、私と看護助士おばさんは車で帰路につきました。
看護助士おばさんがさぞかし里親女を責めるかと思っていた私は、平穏なままに解散したことが意外でした。看護助士おばさんは緊張の後に気が抜けてしまい、怒る元気も無くしてしまったのでしょうか。
里親女は狡猾な人間とは思えません。最初から嘘をついて看護助士おばさんを騙そうとした訳ではないものの、ミイちゃんによく似た色柄の仔猫が見つかったので、これ幸いにその仔猫をあてがうことにしたのでしょう。仔猫の返還義務を果たして連日の責め立てから早く開放されたいという里親女の心情は、我が身を里親女の立場に置き換えるまでもなく理解できます。

さて、その後、里親女に対する看護助士おばさんの態度は日増しに輪をかけて尊大になりました。一日五万円以上掛かる猫探偵を雇い、ミイちゃんを捜し出すように、毎日昼夜を問わず電話で迫りました。間も無く、里親女は看護助士おばさんに行き先も告げずに何処かへ転居してしまいました。同時に、里親女の携帯電話も繋がらなくなりました。
(続く)

次回、第八十四話、公園へ戻ります。
以上
管理人
2016.10.16

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑫ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑫

「まあ、またそれらしい子が見つかりましたら、いつでも連れて来て下さい。そんなに遠くには行かないでしょう」
獣医師の慰めともならない慰めの言葉を聞いている内に、診察室の中の二人は解凍されました。
「ありがとうございました。お騒がせ致しました」
看護助士おばさんが獣医師にお礼を言うと、里親女も後に続いて深々とお辞儀をしました。

看護助士おばさんが初診料を含む診察代金、数千幾らかを受付で支払いました。財布からお札を出す時、看護助士おばさんの頬は紅潮し、顔が強張っていました。
私たちは元来た道を引き返しました。途中、口を開く者は誰もいません。どんより曇った空模様が、私たちの胸の内を代弁していました。
程無く私たちは里親女のハイツの前に到着しました。
看護助士おばさんと里親姉妹は、今後の捜索と諸費用の清算について手短に相談しました。
キャリーバッグの中の猫に本来の飼主が見つからない場合、看護助士おばさんが自宅へ引き取ることになりました。
(続く)

以上
管理人
2016.10.09

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑪ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑪

看護助士おばさんがうつむき加減に目を逸らしたところで、獣医師の顔に侮蔑と優越感の混在した表情が見て取れました。
私は何度となく、これと同じ表情を勤務先の経営者の顔に見た覚えがあります。社員が失敗したり的はずれな意見を述べたりすると、先ずその経営者の口から一言ついて出ます。
「ん。そうかな?」
経営者の顔は喜びを噛み殺して鼻で笑うという類の、何とも言えない表情に変わります。
「こいつはばかか!ふん。それに比べて何て俺は賢いのだ」
経営者は口頭で注意をする代りに先ず部下を見下し、次にほぼ同時に優越感を抱くことによって自己満足と至福の世界に陶酔しているのです。
日頃、顧客にも業者にもどこにも頭が上がらないので、唯一従業員だけが抑圧された心の捌け口なのです。
獣医師の診断は、関係者の期待を裏切る結果となりました。
(続く)

以上
管理人
2016.10.02

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑩ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑩

一瞬時が止まり、看護助士おばさんは放心状態に陥りました。
里親女は宿題を忘れた子供のように、きまりが悪そうな顔をしてうつむいています。私と里親女の姉は、黙って顔を見合せました。里親女の姉の目はまん丸、口は半開きです。
そもそも、里親女の部屋で二人して何を長々と調べていたのでしょう。
わざわざ動物病院迄足を運び、獣医師に小さな目の傷を確認して貰う迄もありませんでした。顕微鏡を熱心に覗いていて、己の部屋が火事の煙に包まれていても気が付かないようなものです。
「残念ですが、明らかにこのこ(猫)はその、ミイちゃんとは違いますね」
「残念」という言葉とは裏腹に、獣医師の顔には判別を成し遂げて責任を果たしたという満足感と、厄介事から解放された安堵感が表れていました。
(続く)

以上
管理人
2016.09.30

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑨ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑨

看護助士おばさんと里親女が揃って頷きました。
獣医師は左手で猫を押さえながら、診察台の隅に置いたチラシに目を移しました。
「色と模様もそっくりだから間違い無いわ」
今迄黙っていた里親女が、初めて口を開きました。
「そう言われればそうですが、色と模様は仔猫が成長するにつれて変わることは往々にしてありますからね。他に何かはっきりした特徴があればねえ」
獣医師はそう言い終えると、チラシを右手に取って診察台の上の仔猫と丹念に見比べました。

「うーん。ミイちゃん。ミイちゃん、ねえ」
何か手掛かりはないかと目を凝らしていた獣医師が、急に声を裏返して叫びました。
「え?ミイちゃん?雌?」
「ミイちゃんと言えば、お捜しの猫はチラシの通り雌ですよね?」
診察台を挟んで、獣医師と対面している二人はまた揃って頷きました。
すると、獣医師は重く立ち込めていた霧を吹き飛ばすかのように自信たっぷりに叫びました。
「ここにいる仔猫は雄猫ですよ!」
(続く)

あれー なんてことでせう 次回以降の展開は???
以上
管理人
2016.09.18

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑧ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑧

「それでは、この猫はミイちゃんとは違う猫ですか?」
看護助士おばさんが早口で獣医師に結論を求めました。
「うーん。そうとも言い切れませんねえ。生後二ヶ月の頃あった眼球の傷は、仔猫が成長するに連れて完全に消えてしまうことも考えられますからね」
獣医師は天井を仰いで答えました。

「でも先生。前に診て頂いた病院で言われましたのよ。傷は生活には差障り無いけれど、完全に消える事は無いだろうって」
看護助士おばさんが補足しました。
「うーん。僕が診た訳ではないからね。その傷がどのような状態だったか」
獣医師は困惑顔で言訳がましく答えました。
「うーん。他に何かはっきりした特徴はありませんか?」

獣医師は診察室から受付に移動しました。そして、カウンターから身を乗り出し、待合室の掲示板に留めてあるチラシを剥がして診察室に戻りました。
「この猫ですよね?捜しているのは」
獣医師は診察台の上の猫とチラシを見比べて言いました。
(続く)

以上
管理人
2016.09.11

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

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東京猫物語 第八十三話ー⑦ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑦

院内は静かで、待合室にいても受付カウンター越しに診察室の中での遣り取りが分かります。
私と里親女の姉は受付の前に立って診察状況を見守っていました。看護助士おばさんが仔猫探しに至った経緯を一人で喋り続けています。
誰かが頼みに来ていたのでしょう。受付カウンターのすぐ右手、待合室の掲示板には、一月前に配布されたミイちゃん捜索のチラシがマグネットで留めたままありました。

獣医師は五十代前半と思われる、体格の良い男性でした。獣医師は最初に猫の体重を計り、次いで猫の口を開けさせて歯の状態を調べました。
「なるほど、大体生後四ヶ月前後ですね」
診察台の上で丸まっている猫はとてもおとなしく、獣医師の為すがままでした。獣医師は診察台の上に点灯しているスタンドライトの位置を調節し、小さなスコープを目に掛けて仔猫の眼球を丁寧に調べ始めました。
「うーん。左の目に傷は無いな。右目かな。うーん。どちらにも傷は無いな」
獣医師は診た通りの結果を告げました。
(続く)

以上
管理人
2016.08.30

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東京猫物語 第八十三話ー⑥ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑥

五分も歩くと、私たちは動物病院に到着しました。真っ白な新しい建物です。
中央のガラス扉から中に入ると、私たちの他に来訪者はいませんでした。
看護助士おばさんが受付で用向きを告げると間も無く、私たちは二部屋ある診察室の待合室に近い方の部屋へ通されました。その診察室は待合室とは引戸一枚で隔てられていて、受付のカウンター越しに待合室から中の様子が窺われます。

キャリーバッグを抱えた里親女と看護助士おばさんが先ず診察室に入り、里親女の姉が後に続こうとしました。しかし、診察室は四人も入るには狭く、私と里親女の姉は待合室へ戻りました。
「この猫がこの近所で逃げ出してしまった猫かどうか、確認してください。捜している猫の証として、左目の眼球に小さな傷がありました」
看護助士おばさんが、再度用向きを獣医師に告げました。
(続く)

以上
管理人
2016.08.21

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東京猫物語 第八十三話ー⑤ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑤

「ミイちゃんとも思えるし、はっきりそうだとは言えないわね。どう?写真に似ている?」
看護助士おばさんは右手の掌に仔猫の写真を掲げました。
看護助士おばさんは確信が持てないままでした。
看護助士おばさんが分からないのに、二ヶ月前の写真と見比べただけで私に見分けがつくはずがありません。
私は屈んでキャリーバッグの中を覗き込みました。
「色柄は似ていますね」
私が答えると、里親女が横から口を挟みました。
「絶対ミイちゃんに間違い無いわ。たった何日間かだったけれど、私はミイちゃんと一緒に寝たり遊んだりしたからよく分かるの」
里親女は言い切りました。
「これからすぐそこの動物病院へ行くことにしたのよ」
看護助士おばさんは、ミイちゃんの左目の眼球に小さな傷があったことを覚えていました。
「獣医さんに診察して貰えば、はっきりすると思うの」
(続く)

以上
管理人
2016.08.15

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東京猫物語 第八十三話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー④

里親女の部屋の前に着くと、看護助士おばさんが呼び鈴を鳴らして名乗りました。里親女はすぐに出て来て私たちを部屋の中へ招きました。そこには里親女の姉も来ていました。
「すぐに済むでしょう」
私は入室を辞退し、部屋から出て来た里親女の姉と通路で立ち話をしました。
里親女の姉によると、看護助士おばさんは早く仔猫を見つけるように毎日里親女に催促し、時としてかなり高飛車な態度で接していたそうです。怖くなった妹(里親女)は、今日姉に同席するように頼んだという話です。

看護助士おばさんが入室してから二十分は経ったでしょうか。里親女の姉と話が尽きた時、二人が部屋の中から出て来ました。二人は晴れ晴れとした表情とは程遠く、里親女は仔猫の入ったキャリーバッグを右手に提げています。
「長かったですね。どうでした?」
私は看護助士おばさんに尋ねました。
(続く)

以上
管理人
2016.08.07

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東京猫物語 第八十三話ー③ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー③

ミイちゃんが見つからないまま、更に一月が過ぎました。
「それらしき仔猫を見掛けた」などと、チラシを見た人から看護助士おばさん宛に電話連絡は何件かありました。しかし、それらはいずれもミイちゃんの存在を確信させる有力情報ではなく、看護助士おばさんが出向いても空振りに終るばかりでした。
「もう出て来ないかな」
誰もが諦め掛けた時、「ミイちゃんが見つかった」という連絡が里親女から看護助士おばさんに入りました。

その翌日の土曜日、私は急遽看護助士おばさんから同行を求められました。
「よく見つけてくれたわ。今迄の失態は帳消しにして上げるわ」
里親女の住まいへ向かう車中、私が運転している横で看護助士おばさんは子供のようにはしゃいでいました。
「糠喜びに終らなければいいけれど」
仔猫との再会を楽しみにしている看護助士おばさん。私は心配になりました。
(続く)

以上
管理人
2016.07.24

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