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東京猫物語 第八十三話ー⑦ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑦

院内は静かで、待合室にいても受付カウンター越しに診察室の中での遣り取りが分かります。
私と里親女の姉は受付の前に立って診察状況を見守っていました。看護助士おばさんが仔猫探しに至った経緯を一人で喋り続けています。
誰かが頼みに来ていたのでしょう。受付カウンターのすぐ右手、待合室の掲示板には、一月前に配布されたミイちゃん捜索のチラシがマグネットで留めたままありました。

獣医師は五十代前半と思われる、体格の良い男性でした。獣医師は最初に猫の体重を計り、次いで猫の口を開けさせて歯の状態を調べました。
「なるほど、大体生後四ヶ月前後ですね」
診察台の上で丸まっている猫はとてもおとなしく、獣医師の為すがままでした。獣医師は診察台の上に点灯しているスタンドライトの位置を調節し、小さなスコープを目に掛けて仔猫の眼球を丁寧に調べ始めました。
「うーん。左の目に傷は無いな。右目かな。うーん。どちらにも傷は無いな」
獣医師は診た通りの結果を告げました。
(続く)

以上
管理人
2016.08.30

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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