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東京猫物語 第八十三話ー⑧ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑧

「それでは、この猫はミイちゃんとは違う猫ですか?」
看護助士おばさんが早口で獣医師に結論を求めました。
「うーん。そうとも言い切れませんねえ。生後二ヶ月の頃あった眼球の傷は、仔猫が成長するに連れて完全に消えてしまうことも考えられますからね」
獣医師は天井を仰いで答えました。

「でも先生。前に診て頂いた病院で言われましたのよ。傷は生活には差障り無いけれど、完全に消える事は無いだろうって」
看護助士おばさんが補足しました。
「うーん。僕が診た訳ではないからね。その傷がどのような状態だったか」
獣医師は困惑顔で言訳がましく答えました。
「うーん。他に何かはっきりした特徴はありませんか?」

獣医師は診察室から受付に移動しました。そして、カウンターから身を乗り出し、待合室の掲示板に留めてあるチラシを剥がして診察室に戻りました。
「この猫ですよね?捜しているのは」
獣医師は診察台の上の猫とチラシを見比べて言いました。
(続く)

以上
管理人
2016.09.11

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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