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東京猫物語 第九十話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第九十話 幸せになってよかったね ー②

「何か気に障ったのかな?」
私は彼女の様子が少し気に掛かりました。そこへ、その日の一組目のお客さんたちが来店し、私は挨拶もそこそこに雀荘を出ました。

後日、私は猫町公園で麻雀屋の年配の女性従業員さんに出会いました。そして、四方山話の後、思い掛け無い話を聞かされました。
「この前、うちの若い人がね、奥で泣いていたのよ。どうしたの?って、聞いたら「幸せになってよかったね」ですって。あなたが持って来たおにいちゃんの写真を見て、泣いていたのよ」

麻雀屋の若い女性従業員さんが、猫町公園でおにいちゃんと接したのは短い期間でした。公園猫だったおにいちゃんの為に、涙を流して喜んでくれるとは。私は深く感じ入りました。
「陰ながらこれ程迄におにいちゃんの幸せを願ってくれるとは。本当に、おにいちゃんを大切にしないとなあ」
偽りの無い私の心の内です。
「そうね。おにいちゃんを看取る迄、大切にしてあげてね」
麻雀屋の年配の女性従業員さんは、左の腕に下げたバッグの中からシラス入りのマグロ缶詰を一つ手に取り、私に差し出してくれました。
(続く)

もうすぐ 完結! 猫のおはなし

以上
管理人
2017.04.25

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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