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東京猫物語 第八十三話ー⑩ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十三話 里親会の顛末弐ー⑩

一瞬時が止まり、看護助士おばさんは放心状態に陥りました。
里親女は宿題を忘れた子供のように、きまりが悪そうな顔をしてうつむいています。私と里親女の姉は、黙って顔を見合せました。里親女の姉の目はまん丸、口は半開きです。
そもそも、里親女の部屋で二人して何を長々と調べていたのでしょう。
わざわざ動物病院迄足を運び、獣医師に小さな目の傷を確認して貰う迄もありませんでした。顕微鏡を熱心に覗いていて、己の部屋が火事の煙に包まれていても気が付かないようなものです。
「残念ですが、明らかにこのこ(猫)はその、ミイちゃんとは違いますね」
「残念」という言葉とは裏腹に、獣医師の顔には判別を成し遂げて責任を果たしたという満足感と、厄介事から解放された安堵感が表れていました。
(続く)

以上
管理人
2016.09.30

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。
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