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東京猫物語 第八十一話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十一話 「ふん!レベルが低い」ー④

猫町裏通りの皆さんがモモちゃんを頻りに褒めていたので、税理士事務所の奥様は亡くなった飼猫との思い出を懐かしみ、誰かに聞いて欲しくなったのでしょう。
「御苦労様でした。それでは」
税理士事務所の奥様は外門を閉めて、奥の玄関の中へ引っ込みました。

奥様の姿が完全に見えなくなると、何時からいたのか、私の背後で黙って立ち聴きしていたα社のお姉さんが口を開きました。
「ふん、レベルが低い。飼猫がトイレの粗相をしないくらい当り前じゃないの。家の中で粗相しなかったからと言って、どうせその辺の花壇とかをトイレ代りに使って御近所に迷惑を掛けていたのに違いないのだから」
猫差別の件以来、私はα社のお姉さんの言動には少しも驚かなくなりました。日頃他人には見せない裏の顔と、上品な淑女然たる表の顔とに今更大きな溝を感じることはありません。

モモちゃんが引き取られてから半月程経って、某公益法人の女性がモモちゃんの写真を持って猫町裏通りに顔を出しました。
「写真、彼女から貰って来たの」
写真の中のモモちゃんは、心もち大きくなったように見えます。飼主の女性の膝に抱かれ、大きく見開いた目でじっとこちらを見つめています。
(続く)

次の第八十二話 は、猫町で猫にかかわるばあ様姉妹のおはなしです。
以上
管理人
2016.5.8

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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