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東京猫物語 第八十話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー④

女性の声だから安心したのでしょう。
用件を聞かぬ内に部屋の主はドアを開けて屋外へ一歩踏み出しました。

二十歳になるかならないかの若い女です。看護助士おばさんは素早くドアノブを片手で掴みながら用件を切り出しました。若い里親女の横顔は「しまった」と言わんばかりの、ばつが悪い表情に変わりました。そして、私の顔を一瞥して「もう逃れられない」と観念したのか、看護助士おばさんとじっくり向き合いました。待機していた麻雀屋さんも合流し、私の後ろに立ちました。里親女が一瞬怪訝そうな表情を顔に浮かべると、すかさず看護助士おばさんは「里親会の会員たちです」と説明しました。実際には会員ではない私たちは、里親女に軽く会釈しました。会員が二人も同行して押し掛けて来たと知り、里親女は素直に真実を語り始めました。

「実は。仔猫は逃げてしまって。捜し出したらすぐに返すつもりだったのだけど。何処かへ行ったまま戻って来ないのよ」
里親女はたどたどしい小声で遠慮がちに言いました。
(続く)

以上
管理人
2015.12.27

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「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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