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東京猫物語 第八十二話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー②

麻雀屋の従業員さんたちと看護助士おばさんはこの姉妹と猫町公園で知り合いになって以来、お互いにお茶を御馳走するなど、そこそこ親しくお付き合いを続けています。老姉妹の住居には猫が六匹います。普段、老姉妹は猫を屋外へ出しません。バアサン妹は、猫町公園の猫たちに朝夕御飯を与えます。

バアサン姉は、マンション一階の駐車場に来る雄猫ハナちゃんをかわいがっています。昔、ハナちゃんがお腹に怪我をした時、近所の誰かが動物病院へ連れて行きました。そして、傷の治療ついでにハナちゃんは去勢されました。バアサン姉は関与していません。バアサン姉は他人との交流を求める性格ではなく、猫たちに関する諸々の相談事は全てバアサン妹が窓口となります。バアサン妹は財産を築いただけあって、金勘定に長けています。看護助士おばさんが猫の缶詰等をまとめて購入し、バアサン妹と分け合う機会が何度となくあります。代金を清算する時、決まってバアサン妹はレシートと商品、お釣りを細部迄照らし合せ、僅かな違いも無いことを確認します。看護助士おばさんによると、バアサン妹は財布の中身、それも小銭入れの中身を一円単位迄正確に把握しているそうです。バアサン妹は記憶力も良く、公園猫たちに与えたおかずを三、四日前の分迄正確に覚えています。
「一昨日の夕方にはなまり節、その前の朝は焼いたサンマの残り」という調子です。
「本当にしっかりしているよ」
お金に細かいという点で多少皮肉を込めてではありますが、麻雀屋さんたちは頻りに感心していました。物でもお金でも何かに強く執着することは、明晰な頭脳と健康な体を維持したまま長生きする秘訣なのでしょう。バアサン妹はそれを実践している生き見本のような方です。
(続く)

以上
管理人
2016.6.5

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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