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東京猫物語 第八十話ー⑫ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑫

看護助士おばさんの怒りは尚も収まらず、まくし立てました。
「売れ残った三十女とかが目を吊り上げてやってるんだから。「僕!か(飼?買?)わないならあっち行って」って、見に来た子供を怒鳴り散らすわ。ごみは散らかしたまま帰るわ。場所を借りているだけで、責任は全部元親ですって。だったら最初から会として活動する意味はないでしょう。所詮寄せ集めってことよね。誓約書ばかり交したって、里親がおかしな人だと分かった時点ですぐに返して貰わなければ何にもならないじゃないの」

来る時と同じような話になりました。
「ボランティアだなんて言っても、積極的に純血種の犬を集めて、三万円とか四万円で転売しているのよ。それも自分たちは手術代なんて掛かっていないのに。雑種は二千円から四千円の寄付で済むのに、所詮小金目当てなのよ。まともに人と付き合えない姨捨山の住人たちが、寄り集まって動物をだしに慰め合っているんだから」
看護助士おばさんはずいぶん件の愛護団体の裏事情に詳しい。
最初から問題だと分かっていたこともたくさんありました。何故、今迄里親会を当てにしたり、私たちに参加を勧めたりしたのでしょう。看護助士おばさんが愛護団体を貶してばかりいるので、私は次第に不愉快になりました。
麻雀屋さんは、相槌を打つのが親しい知人としての義務かと頻りに頷いていました。
「私もおかしいと思ったのよ。衛生面、飼育管理の面で、何度か首を傾げたくなりましたもの」

私はハンドルを握って二人の話を黙って聞いていました。
看護助士おばさんは自分であの若い女を里親として認めたのだから、里親会にばかり責任を被せることもないでしょうに。自分の非を認めてしまうと自我が崩壊してしまうから、全部愛護団体のせいにすれば楽なのでしょう。激怒が頂点に達した看護助士おばさんに対して、勿論、そんなことは告げられません。
「愛護指導センターなどと立派な看板を掲げているけれど、この県は猫の譲渡は行なっていませんよ。仔猫すらね。犬の年間譲渡数だって、あの愛護団体の三分の一にも満たないし。収容した犬の、飼主への変換率も著しく低いですね。たいして指導らしい指導も無いのだから、センターの広大な敷地、立派な施設、多額な人件費の一部は無駄。会長さんたちは限られた費用、時間、乏しい人材の中で精一杯やっているのでは?完璧を求めても限界があるでしょう」
私は最後に少しだけ愛護会団体を庇いました。
(続く)

以上
管理人
2016.3.5

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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