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東京猫物語 第八十二話ー⑥ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十二話:猫婆狸婆ー⑥


麻雀屋さんたちも首を振って苦笑するばかりでした。
バアサン妹は猫婆ではなく、老獪な狸婆でした。
都合の良い耳、便利な記憶。なかなかたいしたものです。無駄に歳を重ねてはいません。仕事上や生活のある局面において、私たち若輩者は老獪な狸バアサンの対応を見習わなければならない場合が多々あります。
猫も自分に都合の悪いことは聞えないのだか、分からないかのように振舞います。猫は飼主から声を掛けられても、相手をする気がないと知らん振りです。何かを求められても、猫は自分の意に染まないと受け付けません。こちらの言う事が分からないのかと思いきや、大概分かっています。
一面、猫は自分に都合のいいこと、得になることはすぐに覚え、理解します。実に良く理解し、記憶力も抜群です。猫は一流の外交家です。自分の主張は通そうとしても、決してその代償に人の傘下には入りません。
禍根を残すことなく、自分の主張をいつの間にか上手に通してしまいます。猫は独立した精神の持主です。人の世話になっても、人に従属しているとは思っていません。家の者に対して平気で猫パンチを見舞っておきながら、一分と経たぬ内に自分が行った不埒な行為など一切無かったかのように人に甘えて擦り寄る猫もいます。
このような猫の習性を私は否定的に受け止めるつもりはありません。寧ろ、趣のある、素晴しい習性として受け入れています。
猫をかわいがっている人たちは、そんな猫との遣り取りを楽しんで一緒に暮らしているのでしょう。猫はそれで通ります。
しかしながら、バアサン妹の老獪な狸ぶりを好意的に受け入れる人はいません。
私たちは一同、その場で笑いました。ただ一緒に笑うことによって、お互いが心中に抱く思いを十分に語り尽しました。
(続く)

次回、第八十三話は里親会の顛末 その弐、「いなくなったミイちゃんがみつかった」との連絡を受けたが。。。。。

以上
管理人
2016.07.03



「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。


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