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東京猫物語 第八十話ー⑧ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語 
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑧

何を言っても無駄と判断したのか、看護助士おばさんは会の人には挨拶もせず、私たちを置いて一人で先に車に戻ってしまいました。
「どうする?」
私は麻雀屋さんに今後の方針を確認しました。
「モモちゃんの飼主さんは猫町の皆さんで探しましょうよ。ねえ?」
麻雀屋さんの答えは私を満足させるものでした。
「それでは、モモちゃんをこのまま連れて帰りましょう」
私の言葉に麻雀屋さんは黙って二度三度頷きました。

荷物を降ろし終えた会長さんに、小学生の娘を連れた母親が私たちより先に声を掛けてしまいました。娘は仔猫の入っているケージを右手に下げています。
「前に貰ったこの仔猫ね、蚤がいたのよ。それに下痢もしていてあまり丈夫そうではないのよ。一番かわいい顔だし、模様がキジ虎だから気に入ったのだけど」
母親はいきなり本題に入りました。
「悪いけど、他の仔猫と取り替えてくれないかしら?」
(続く)

以上
管理人
2016.1.24

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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