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東京猫物語 第八十一話ー② [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十一話 「ふん!レベルが低い」ー②

飼主候補の女性が猫を飼うのに十分な資質を備えた人であることを、私たちは事前に某公益法人の女性から聴き取っています。猫の為に必要な如何なる出費も躊躇せず、深い情愛を以て世話ができる方です。前の猫は屋外へ出しませんでした。大切に飼っていたのでしょう。飼猫の平均寿命をはるかに超えて長生きしました。

「モモちゃんをうちの子にしても宜しいでしょうか?」
モモちゃんに面会した時、飼主候補の女性はその場で決断しました。そして、翌日の午後、モモちゃんは新しい家に迎えられることになりました。
「モモちゃんをかわいがってくれる方なら幸いです」
縁組が決まった後、猫町裏通りの皆さんも一様に賛成してくれました。
お別れの時、猫町裏通りの皆さんがモモちゃんを見送る為に路上に出て来ました。モモちゃんはキャリーバッグの中。新しい飼主の女性に抱えられています。魚屋さん夫婦、運送屋の皆さん、喫茶店の従業員さんたち、税理士事務所の奥様、塗装屋さん。皆さんはモモちゃんとの別れを惜しみつつ、これから幸せに暮らせるように願って見送りました。

「まあ、良い人ですから御理解下さい」
私は運送屋の社長さんと目が合ったので、言葉を掛けました。
「いやぁ、これで良かったよ。また、何かあったら、その節は宜しく」
運送屋の社長さんは笑顔で応えてくれました。

「なんだかんだ言っても、モモちゃんが一番懐いていたのは俺だよな」
傍で聞いていた塗装屋さんが、私たちの会話に割って入りました。

「ちょっと違うなぁ。一番早くからかわいがっていたのは、この俺なんだから」
透かさず、運送屋の社長さんが反論しました。
猫町裏通りの人たちは、皆優しい心の持主でした。僅かばかり関った仔猫の里親探しに協力し、飼主が決まるとモモちゃんの幸せを心から願いました。
(続く)

以上
管理人
2016.4.17

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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