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東京猫物語 第八十話ー① [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話:里親会の顛末 壱ー①

モモちゃんは雀荘の事務所で元気に暮らしています。
雀荘の事務所では次回の里親会への参加について意見が交されていました。
そこへ看護助士おばさんが飛び込んで来ました。
看護助士おばさんは目にうっすら涙を浮かべて仔猫を託した里親を罵り始めました。

「ひどい女だったわ。信用していたのに。電話でミイちゃんの様子を尋ねたら、会場で話した時とはうって変わって冷たい態度なの。心配になって面会を求めたら、「もう私が貰った猫だから」と断わられたのよ。急いで会長さんから誓約書にある女の住所を聞いて、翌日の夕方、そこへ行ったのよ。ところが、留守で。それもXXハイツだって。誓約書の住所欄には番地だけで、共同住宅だなんて書いてなかったわ。XXハイツの管理会社に電話で確認すると、ペット禁止住宅だと判ったの。若い女性の一人暮らし。まして、ペット禁止の賃貸住宅ではミイちゃんは幸せには暮らせないわ」
看護助士おばさんは一気にまくし立てました。

「急いで返して貰いなさいよ」
「そうそう、その通りよ」
麻雀屋さんたちが口を揃えて言いました。

「私もそう思って里親女の携帯電話に何度も掛けたけれど、出ないのよ。会長さんに電話して貰うと、一度だけ繋がったみたい。「猫は元気でちゃんと世話しているそうだから問題は無い」ですって」
看護助士おばさんはがっくり肩を落して溜息をつきました。
(続く)

以上
管理人
2015.11.29

第八十話もすこし長くなります。

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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