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東京猫物語 第八十話ー⑩ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑩

「それではこれで失礼します。お世話になりました」
私たちは会長さんに挨拶を済ませ、立ち去ろうとしました。
会長さんは私たちに対してばつが悪いのか、伏し目がちに「御苦労様」と一言だけ挨拶を返しました。私たちが車へ向かって歩き出すと、背後で会長さんの吐き捨てるような話し声が聞こえてきました。
「余計な事を言いやがって。黙っているように言ったのに。かわいがっている、で通せばよかったんだ。あ、おい。そいつはラブラドールの純血種だから、寄付金は四万円以上だぞ」
どうやら会長さんは、最初に里親女から仔猫が逃走した事実を聞いていた様子です。
「隠蔽していたのかしら?」
麻雀屋さんが私に尋ねました。
私は麻雀屋さんに問い返しました。
「おばさんに真実を伝える? 隠さない方がいいよね? それにしても、何?ラブラドールの純血種だから四万円って」
(続く)

以上
管理人
2016.2.9

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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