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東京猫物語 第八十話ー⑨ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第八十話 里親会の顛末 壱ー⑨

とんでもない女です。蚤がいるなら駆除してあげればいい。下痢するのは何かしら原因があるのでしょう。整腸機能が弱いとか、仔猫にはよくありがちです。どんなに元気な猫だって長い間一緒に暮らしていれば下痢もするし、もっと重い病気に罹ることだってある。この女には仔猫を医者に見せる程の優しさも備わっていないのでしょうか。確かに健康な状態で里親に渡すべきでしょう。
しかし、飼主のいない、保護した猫だと分かっているのに「取り替えてくれ」とは。

「物じゃないよ。全く」
私は喉から出掛かった言葉をぐっと飲み込み、会長さんの対応を見守りました。
会長さんは母親のクレームには反論せず、猫のケージが並んでいる場所に母娘を案内しました。
そこでしばらく仔猫を見比べた後、会長さんは母娘に提案しました。
「これでいいんじゃないですか。同じような模様で、同じ雄だから」
結局、母娘は前の仔猫を戻し、別の仔猫を貰って行きました。
「あんな女がきちんと世話できるのかしら」
麻雀屋さんがぼそっと呟きました。
(続く)

以上
管理人
2016.1.31

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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