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妊婦と猫、トキソプラズマ(妊婦さんと猫の生活) [猫の飼い方]

== original column : by the cat advocator ==


「妊婦さんと猫、トキソプラズマのお話」


「妊婦さんは猫を飼わない方がよろしい」
以前、高齢者の方々からこのようなお話を耳にしたことがあります。
「どうして?」と問うと、たいてい明確な回答は得られませんでした。

「何がよくないのでしょうか?」:
妊娠中の妊婦さん(特に初期~中期)がトキソプラズマに感染して原虫が胎児に入り込むと、流産したり、出生後の子供に脳症状や視力障害、神経症状等が現れる場合があります。

猫を飼っているお家はたくさんあるのに、まわりでそのような症状を聞いたことがありません。
「本当に危険なのでしょうか?」:
1994年、東大分院産婦人科の調査によると、東京都民の妊婦さんが妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した確率は0.5%程度とのこと。しかし、猫が感染源と特定されているわけではありません。その内、原虫が胎児に移行する確率は半数以下。移行しても、子供に何らかの症状が現れる場合は、更に低い確率とのことです。

「トキソプラズマとは?」:
顕微鏡で確認できる微小サイズの原虫。猫科動物が最終宿主。人や他の哺乳類、鳥も感染する。感染猫が糞中に排出する「オーシスト」を経口摂取したり、「豚・羊肉」の中にいる「シスト」を不十分な熱処理のまま食することによって感染する。トキソプラズマは排出後、長期にわたり生存。土中や自然界にも広く存在している。
(注:オーシスト・シストは発育段階の虫体)

知っておくべき事:
(一):初めてトキソプラズマに感染した猫は、感染から2~3週の間、糞便中にオーシスト(感染源の虫体)を排出する。しかし、免疫の健康な猫は、その後オーシストを排出しない。
(二):猫の糞中のオーシストは、排泄された直後には感染力を持たない。排泄後、二、三日経ってから感染力を持つようになる。
(三):日本の成人のトキソプラズマへの既感染率は30%超と言われている。感染しても通常無症状。原虫が胎児へ移行する心配は、妊婦さんが妊娠中に「初めて」感染した場合。(妊娠前に一度感染していれば、「通常」心配は無い)
(四):トキソプラズマは塩素・消化液等には耐性があるが、熱処理(70度以上)によって死滅する。
(五):既に感染していたのか、感染したばかりなのか、感染していないのか、人も猫も抗体検査によって容易に明らかになる。

結論:
まさに「敵を知り、己れを知らば、百戦危うからず」でしょう。猫だけが特に危険というわけではないようですね。
生肉(特に豚・羊)の扱いには調理器具を含めて注意を払い、肉は十分火を通してから食べる。
妊婦さんは庭土いじり等を避ける。
猫のトイレ始末は速やかに清潔に。糞の始末はできるだけ他の家族に任せる。
未感染の猫が感染源と接触しないように、猫は完全に室内で飼う。生肉を与えない。ネズミ、昆虫などを猫が食さないように注意。
既に飼っている猫を遠ざける必要は全く無いと言えるでしょう。妊娠中に新たに猫を飼うかどうか、先延ばしを検討する必要はあるかもしれません。

参考文献:為になる本です。
「イヌからネコから伝染るんです」藤田紘一郎著(講談社)
「イラストでみる猫の病気」(講談社)
「ペットから病気がうつる!」浅野隆司・浅野妃美著(国書刊行会)
「動物由来感染症 その診断と対策」(真興交易 医書出版部) 
以上

管理人

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