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東京猫物語 第三十三話 [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第三十三話:トラミ(寅美)ちゃんの復帰

六月下旬(1999年)、トラミ(寅美)ちゃんが、小さな仔猫を二匹連れて猫町公園に現れました。
この二ヶ月、トラミ(寅美)ちゃんは、公園前のバアサン姉妹の部屋で暮らしていたはずです。
仔猫共々部屋から飛び出て来たのでしょうか?それならば、すぐにバアサン姉妹宅へ帰るはずです。ところが、トラミ(寅美)ちゃんと仔猫たちは、何日経っても公園にいます。
「バアサンたちが死んだのかしら?」
口さがない人々の間では、そんな噂も囁かれました。
「トラミ(寅美)ちゃんは私が飼うなどと言っていたけれど。自由な公園暮らしが身に付いていた猫だから、マンションの部屋の中では飼い切れなくなったに違いないわ」
チョビを撫でながら話す文具屋おばさんの顔には「そら見た事か」という感情が見て取れます。
「トラミ(寅美)ちゃんが引き取られる時、仔猫はもうお腹の中にいたのかしら?」
相槌を打っていた印刷屋おばさんが聞き直します。
「外で暮らしていた猫を家の中に閉じ込め、飼い慣らすには一苦労よ。外へ出たがるし、ストレスが掛からないように世話をしないとね。トイレの躾はそんなに大変ではないけれど。まあ、年寄りには無理だったのよ。案外、仔猫が邪魔になったりしてね」
文具屋おばさんが更に後に続いて言いました。
おばさんたちの推察は、的を射ているようにも思われます。
「それにしても、仔猫まで放置することはないのに!自分で飼うと言って自宅に引き入れたなら、その時点から責任が伴うはずでしょう」
私が憤ると、印刷屋おばさんは「堪らない」という風に首を横に振りました。
「本当に。面倒な事は他人任せでは、いいとこ取りよね」
クリスマスローズ
トラミ(寅美)ちゃんが仔猫を連れて猫町公園に復帰した日、文具屋おばさんに転勤の辞令が下りました。トラミ(寅美)ちゃんとほぼ入れ替わりに、文具屋おばさんは隣の県の店舗に移動となります。文具屋おばさんはトラミ(寅美)ちゃんの名付け親だけに、彼女を一番かわいがっていました。公園猫たちにも毎日食事を与えていました。
「もう、毎日ここへは来られない」
後任への引継ぎ期間が終りに近付くと、文具屋おばさんは寂しそうに溢しました。
「出戻ったトラミ(寅美)ちゃんと仔猫たちは、文具屋おばさんが自宅に引き取るだろう」
猫町公園で文具屋おばさんと知合いになった人たちは、誰もがそう思いました。
(続く)

以上
管理人
2014.05.21

(実際は1999年五月下旬だったか?曖昧)

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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