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東京猫物語 第七十九話ー⑭ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第七十九話 里親会弐ー⑭

食事の後にはフライドチキンの骨が、小山盛りになってテーブルの上の雑紙に積まれてありました。
「こうして食べた鶏の骨を見ていると、猫は助けても鳥は私たちのお腹の中かと、妙な気持になるわね」
麻雀屋さんがまた小声で囁きました。日頃、はきはきと話をする麻雀屋さんが、どうも今日は周りに遠慮する場面が目立ちます。

何と答えたら良いのか分からぬまま、私は思い付く言葉を並べたてました。
「動物愛護団体だからと言って、皆がベジタリアンでなければならない訳ではないしね。食物連鎖さ。人間は動物性タンパク質が必要なんだ。普段はバナナや木の実を食べているチンパンジーでさえ、急に動物性蛋白質を欲すると、他の種類の小さい猿などを狩って食べることもあるしね。animal welfareとかAnimal rightとか、人によって温度差があるのは当然だよ。ブロイラーのフライドチキンを食べても罪ではないでしょう。彼らが今迄に多くの猫の為に労を執っている善行とは別物ですよ」

私の話を聞き終えて、麻雀屋さんは視線を地面に落してぶっきらぼうに言いました。
「免罪符ね」
麻雀屋さんの表情からは、私の意見に対する賛否を読み取ることはできません。私とて信念を持って述べた訳ではなく、麻雀屋さんから何か違う意見を聞けるのではないかと期待した迄です。麻雀屋さんはこの件についてそれ以上言葉を継ぐことはありませんでした。
(続く)

以上
管理人
2015.9.27

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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