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東京猫物語 第七十九話ー④ [「東京猫物語・外猫観察記」(管理人著・猫のお話)]

東京猫物語
第七十九話 里親会弐ー④
(里親会弐は今回で4回目、飽きない程度に分割公開しております)

その時、会長さんが私たちの後ろを通ったので、どうして猫の譲渡会を里親会と呼ぶのか、私は質問しました。
「皆が使っていたから、我々もそう命名しただけだよ」
会長さんは笑って答えてくれました。
「来月から新聞に載せる告知には里親会の名を使わないで欲しいと、新聞社の広告担当者から言われているんだ。新聞の告知欄の見出しも「里親会」を止めて「差し上げます」に変更するのだと」
会長さんは少し苛立って眉間に皺を寄せ、事の経緯を私たちに説明し始めました。

「我々が里親会の告知を掲載依頼している、地元のローカル新聞社から連絡があってね。今迄ペットの譲渡に関する新聞社の見出しは「里親募集」としてあったものを、来月より「差し上げます」に代えるのだと。広告主の広告本文に迄制限を加えるものではないと言っているけれど、見出しが与える印象は我々の活動趣旨に誤解とか誤った印象を与えるので、私がメールで抗議したんだ。すると、新聞社の室長の名で返事があってね。何でも直接のきっかけは人間の里親制度と関りのある団体から、ペットに「里親」という名称を使うと、里子たちが「犬・猫と同じだ」と言われ、学校で苛めに遭うのだそうだ。「犬猫に里親という言葉は使わないで欲しい」という動きは、全国的に広まりつつあるみたいなことを言っているらしい。その団体は、何年も前から全国的に「里親」という言葉を人間以外に使用しないように働き掛けている様子だが、多くの人たちは取り合っていないのが実情で、未だに「里親」という言葉はいろいろな所で使用されているよ。でも、ど田舎新聞は彼らの要請を言われるがままに受け入れてしまったよ。新聞社は広告本文の内容において「広告主の方々に言葉を強要するものではない」と説明している一方で、本文に「里親募集」という言葉を使って掲載を依頼した一部の広告主たちに対して、「里親という言葉は使えない、差し上げますにするように」と誘導しているそうだ。

もっとも、里親会という言葉の使用を強く主張する方には、従来通り本文の内容は「里親募集」で掲載を受けているがね。県や市町村の教育委員会、児童相談所にも電話で聞いてみたよ。「本当に里子が犬猫と同じだと言われて苛められているのか?」ってね。でも苛めの事実は確認できず、新聞社に詳細情報を開示するように申し入れても明確な回答は無かったよ。新聞社は言われたことをそのまま聞き入れただけだってさ」
会長さんは両腕を天に伸し、大きく一呼吸しました。
(続く)

以上
管理人
2015.6.28

「どこにでもいるような飼主のいない猫たち。彼らのことをよく知るほどに、きっと素敵な猫に魅せられるはず。飼主のいない外暮らしは、猫たちにとって決して楽ではありません。どうぞ、懐いたらお家に迎えてくださいね」

*東京猫物語は1998年から数年間、東京都心の某公園で猫たちを観察した体験に基づく実話です。

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